第六回作者人狼~『疾』~ サブテーマ『友』『戦』
「魔法少女ストロベリーブリッツ!」
「魔法少女ブルーベリーハート!」
「果実のように甘いハート!」
「甘い甘い夢を召し上がれ!」
……。
「毎回思うんだけどさ」
「はい」
「この口上、強制なの?」
「そうですね」
どうして。どうしてこうなった。もっとあるでしょ……こう……ね?
「変身バンクってさ、いやまぁサービスショットだと思うのよ。本来なら謎の光に包まれた女の子たちがすごいギリギリのラインを攻めて高速着替えをやるんでしょ?」
「すごく体のライン出てるからそういう界隈にウケそうだよね」
「分かる。好きだもん変身バンク。毎回楽しみにしてる程度には。だけどね?」
変身アイテムのコンパクトを見ながらため息をつく。
「自分がやるってなると解釈違いが過ぎるんじゃが???」
ちょっと前の話。一般男子高校生だった俺は、なんかよく分からない内に謎の組織との戦いに巻き込まれ、親友のマコトと共に魔法少女?にされてしまった。いや待て俺は男だ。魔法少女ってなんだよ。俺は少女じゃねぇ。聖剣エクスカリバーもちゃんとついてる。だが……だが……。
「なんで変身した瞬間女になってるの?聖剣エクスカリバーがないんだけど?戻るんだよな?これ」
『大丈夫大丈夫、ちゃんと変身が解ければ元通りだよ、多分』とは開発者の談。大丈夫じゃねぇよスカートめっちゃスースーするんだよ。あと突然聖剣エクスカリバーが消えたら落ち着かねぇよ。男としてのアイデンティティ消すなよ。あと声が明らかに高くなってるし。誰だよこんな設計にしたやつ。
「まぁ、面白いからいいんじゃない?ハヤテも」
と、マコトは呑気に楽しんでいる。
「お前……そういう願望あったのか……?」
「んなわけ?でもせっかく二つの性別楽しめるんじゃん?ゲームみたいじゃん?僕は楽しいよ?」
「げぇ……正気かお前」
「あと、実はコレ戦闘中じゃなくても使えるらしいから。いつでも女の子になれるよ☆」
「『なれるよ☆』じゃねぇんだよ。俺絶対に嫌だからな?親友が女の子になって今まで通り絡めなくなるの嫌だからな?」
「え~、僕としては変わらず絡んでくれてもいいんだけど~?」
「こっちの心の問題だよ!!!いくら親友とはいえ女の子に縁がない俺だぞ?どう絡んでいいか迷うわ!!」
「いいじゃん、中身は一緒なんだし」
「よくねぇよ!!!」
というやり取りをしていた数日後。早速謎の組織との戦いに駆り出されることになったのだ。
「出ましたねぇ!対百合の間に挟まる男キラー・魔法少女ベリーズ!」
「んんっ……あーあー、私たちが来たからにはあなたたちの企みは絶対に阻止するわ!かかってきなさい!」
「おぉ?よく見たら二人ともクソかわいいネ?いいなぁ、オジサンも混ぜてヨ~。な、いいだろ?」
「キッモ。殺す」
「ウヒョッ、そのゴミを見るような目もイイねぇ……ブルーベリーちゃんだっけ?ほらほら、はやくストロベリーちゃんといちゃついt……」
オジサンの頭が地面に叩きつけられる。
「もう!ブルーベリーちゃんに触らないでよ!この変態!」
「……ありがと、マコ……」
「ストロベリー!」
「……ストロベリー」
どうやらマコトもといストロベリーがオジサンの頭にかかと落としを入れたようだ。
「あぁん、床ペロもなんか斬新ん!何か目覚めそう!あぁっ」
「うわ、この変態オジサンだめだよストロベリー。君が触れちゃいけないロクでもない汚物だ」
「おっほぉ、もっと罵ってぇ」
「ストロベリー、離れて」
「うん」
「ん?拙者、もう少しアスファルトの味を堪能させられると思っていたんだが」
「うるせぇ黙れ」
謎の組織オジサン怪人に金的をかます。
「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
「うわぁ……ブルーベリー、人の心ある?」
「いや……このくらいしないとダメだろこれ。あと親友がこんなキモイオッサンに絡まれてると思うと吐き気がして」
「イイねイイねぇ、オジサンそういう女の子同士の絡み好きだよぉ……」
「ストロベリー、さっさと必殺技使っちゃおう」
「はーい。えっと、必殺技使うには……?『まずはストロベリーとブルーベリーでキスを……』って、えぇぇぇぇ!?」
ストロベリーが驚愕のあまり叫ぶ。
「え、俺とお前でキスするの?」
「ファーストキス……」
ストロベリーが頬を染めている。そうしている間にもこの百合の間に挟まりたいオジサンが隙間に入り込んでくる隙を伺っている。
「なに照れてんだよ!時間がないんだ、早く!」
「う、うん!」
親友と唇を重ねる。これは女の子だこれは女の子だ断じてマコトではないこれは女の子だ……
「ラブリーハートに、ちゅっ」
「乙女心に、ちゅっ」
「甘酸っぱい果実はいかが?」
「もぎたて果実を召し上がれ♡」
『ベリーベリー・ラブハートッッッ!!!』
ストロベリーと同時に投げキッスをする。ハートが出てきて、そこからビームが出る。
「おぁぁ……尊い……尊い……ごちそうさまですぅぅぅぅぅぅぅ!!」
百合の間に挟まりたい怪人は、また一人百合の尊さに浄化されていった。
「……なぁ」
「……なに?」
なんとなく気まずいまま、二人で家路につく。
「その……まぁなんというか……ごめんな……」
「ん?」
「ファーストキスが……その……俺で……」
マコトはにこっと笑った。
「今更言う?まぁ……あの時は女の子同士だったからまぁ……ね?いいんじゃないかな?」
「判定ガバだなぁ」
「なんだよう、ならハヤテはファーストキス僕とがよかったの?」
「せめて女の子がよかったぜ」
「だから女の子じゃん」
「……それもそうだったわ……」
なんか幼馴染ヒロインとのキスが微妙な感覚に思えてしまうギャルゲ主人公の気持ちが分かってしまった気がする。
「ま、女同士なら多分心理的にマシな気がする。この……なんだっけ?『百合の間に挟まりたい男撲滅戦争』の解決になるならキスくらい我慢するか……どうせ逃げられないみたいだし」
「そうだね。……それじゃ、ハヤテ。これからもよろしくね」
マコトがウインクする。あれ……コイツ、こんなに可愛かったっけ……。
「ああ。よろしくな」
……無意識でウインクを返してしまった。あぁ、まったく。
なんで親友のことを好きになってしまったのだろうか。
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