第五回作者人狼〜『失』〜 サブテーマ『昔』

「もしもの話だ。仮に私がこの状況を作り出したと言ったらどうする?」

「ぶっ殺す。末代まで呪うどころかお前を末代にする」

「ははは、ならこの状況を作ったのが君だということを神に感謝しておこう」

「ああもうアタシが悪かったってば!」


詳しい話は省くが、私たちのいる建物は今、戦術機甲"タクティカルエリミネィションアームズ"、通称"TEA"の小隊に囲まれていた。


「で。つまりこれは君が乗る責任があるね?」

「あぁもういいよ、傭兵でもなんでもやってやるっての!!操縦方法は?」

「……実地で学んでくれ」

「はぁ???ちょっま」

抗議する前にコックピットへと収納されてしまった。クソったれ。あとで覚えてろ……

『戦術機甲"タクティカルエリミネィションアームズ"起動。システム起動。エネルギー稼働率理論値55%。警告:RW、LW、RP、LP共にエンプティ。武装接続を推奨します。システム制御を近距離戦闘用に設定。スラスター制御をマニュアル操作に設定。身体駆動システム接続。モーショントレース率67%。……出撃許可できません』

「クソッ、動けよ!」

「やぁ、どうだい調子は」

コックピット内の通信機器から聞きなれた声が聞こえてきた。

「最悪。死ね」

「おっと、酷い言われようだ。どうやらその機体、エネルギータンクが破損しているようでね。大丈夫、幸い倉庫に新品が残っていたから換装するまで待ってくれよ」

「もうすぐ正面ゲートが突破される。それまでにコイツを動かさないとアタシらの未来はないぜ」

正面ゲートは、今にも破られそうなほどに歪んでいた。

「天才技術者の私だぞ?間に合うに決まっている」

「天才なら初期不良は出さないでくれよ?」

「すべては予算のせいだ」

「うるせぇ、言い訳はいいからさっさとメンテしろ」

絶対にコイツを地獄に落とすまでは死なねぇ。今心に固く決めた。

「それ、どうだ。システムを起動してみてくれ」

『戦術機甲"タクティカルエリミネィションアームズ"起動。システム起動。エネルギー稼働率理論値90%。警告:RW、LW、RP、LP共にエンプティ。武装接続を推奨します。システム制御を近距離戦闘用に設定。スラスター制御をマニュアル操作に設定。身体駆動システム接続。モーショントレース率95%。出撃可能。初回起動により操縦マニュアルモード起動。各種動作をチェックしてください』

モニターにマニュアルが出てくる。細かいところはあとで熟読しておこう。とりあえず基本操縦法を……

「まずい。今すぐ出撃できるか?正面ゲート突破まで推定残り10秒だ」

「ふざけんなよマジで」

えっとトリガーが遠距離武器使用でスティックを前に倒すと移動、横に倒すと旋回、身体駆動システム接続時は専用のコンソールを使って操作、脳波測定により自分の体を動かすように駆動できるが負荷が……

「正面ゲート破損だ。それじゃ、健闘を祈るよ」

「死ね!!このクソ野郎が!!」

通信先の男に思いっきり暴言を吐きつけ、飛翔した。いや、というかこの機体、本当に思った通りに動いてくれる。そこだけは腕がいいんだな、アイツ。

『戦域レーダーに敵性反応。軽量機が3機です』

「止まれ、そこの所属不明機!我々は違法製造された機体の破壊に来た!抵抗しなければ命までは取らん!おとなしく投降しろ!」

「耳を貸すな。私の設計した機体だ、向こうがエースパイロットじゃない限り君に負ける要素はない。が、鹵獲されては意味がない。気を付けて戦ってくれ」

「他人事だと思いやがって……!」

マニュアル通りにブースターを起動し、高速接近する。

「投降しないのだな。各員、撃て!」

『警告:多重ロックオンされました。速やかに回避行動を取ってください』

銃弾の雨。ヤバい、隠れる場所がない。……そうか、上か!

ブースターを起動し、上へと飛翔する。

「生きてるか?」

「生きてるよクソ野郎」

ブースターを逆噴射し、地面へと急降下する。

「隊長、機体反応消失……いや……重なってる……?」

「上か!」

踵を叩きつける。敵機の腕が飛ぶ。

その腕からライフルをもぎ取って、右手で拾い上げた。

「もらったぜ」

『RW:武装認証。K46c。残弾数60』

そのまま近くの1機に蹴りを入れる。右のトリガーを引くと、大量の弾丸が吐き出される。

『警告:RW-K46c、残弾30』

「退きな。じゃないと殺す」

アタシはトリガーに指をかけ、隊長機とみられる機体に銃口を向ける。

「…… 総員撤退だ。残念だが敵性機体のパイロットは未熟でも、性能差で明らかに勝ち目がない」

撃墜された機体を回収して、奴らは去っていった。


「で。説明しやがれこのクソ野郎」

「いやぁ、まぁ、アレは私が秘密裏に開発していた最新鋭のTEAでね。腕のいいパイロットに乗ってもらうつもりだったんだが、なかなか見つからず。信頼できる仲介屋の君に傭兵を紹介してもらえたらちょうどいいかと思ったんだが、まさか君自身が傭兵になる羽目になるとはね」

「追跡者に気づかずに周辺まで連れてきてしまったのは謝るわ。だけどねぇ、実地でやれ、ってのは意味不明だ。一発殴らせろ」

「痛ぇッッッ!悪かったよ、マニュアルついてるから大丈夫かと思ったんだ」

「絶対アンタを地獄に引きずり落としてやる。覚悟しな」

「詫びとして君の機体のメンテ代は割引しとくよ」

「ちっ。補給屋がいねぇと戦えないのも事実だ。アタシはフリーの傭兵として稼ぐ。メンテの時は顔を出す。……絶対ぇ、死ぬなよ?」

「なに、違法改造してる分整備できるのは私の工房の作業員だけだ。性能だけは保証するさ」

溜息をついて立ち上がる。

「んじゃ。アタシは依頼があるから行くわ」

格納庫に続くドアに手をかける。

「そういえば、あの機体のコードネームは?」

「ジャッジメント」

「へぇ、そう。ありがと」


コックピットでマニュアルを読んでいると、警報が鳴る。

『ミッションアラート。出撃要請受領。承認しますか?』

「面白そうじゃねぇか。よし、承認だ」

『承認。ミッションデータを受信しています』

モニターにミッション情報が表示される。……まぁ、いつもの代理戦争だ。

『システム起動。エネルギー稼働率理論値97%。RW-K46c、LW-Ts-4、武装ロック解除。残弾数問題なし。システム制御を中距離戦闘用に設定。スラスター制御をオートに設定。各種センサー感度良好。機体損傷率0%。戦闘に支障はありません。システム、オールグリーン』

「さて……行くとしようか、ジャッジメント!」

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