第16話 ミートアゲイン

 凛々しい瞳に170センチはあるであろう背丈。左手首にはテーピング。彼女は向日葵ではなかった。

「お久しぶりです!」

 その声に原口先生が答える。

「もしかして、西川さん? 久しぶりね」

 西川祥子。彼女は私たちより3つ年上で、原口先生の教え子だった。今は山蕗高校の女子バスケ部で部長をしているらしい。先生と西川先輩はしばらく懐かしい話に花を咲かせた。

「じゃあこの子たちはみんな先生の教え子なんだ」

「はい、一応」

 私は『一応』をつけた。本当は死んだ川島先生の代理なのだが。呪いのことは先輩には言わないほうがいいのだろうか。

「で、先生はどうしてうちの学校に?」

 核心へと迫る質問。原口先生は苦笑いをして、

「実はある生徒を探しに来たんだけど、門前払いをくらっちゃって」

と言う。

「まあ最近はプライバシーとかうるさいから、身分が証明できるものを持ってきたほうがいいですよ」

「それが忘れちゃったのよ」

「なるほど」

「それで西川さん、あなたに聞きたいことがあるんだけれど……」

「なんですか?」

「向日葵さんって子、知ってる?」

「何年ですか?」

「たぶん今高1だと思うんだけど」

 先生の質問に私も付け足す。

「中学時代はバスケをやっていたらしいです。バスケ部にいませんでした?」

 するとすかさず前田が、

「あの先生と付き合ってたって噂になっていた人です」

と加える。それは言ってよかったのだろうか。一瞬、場が凍ったが、

「ああ、あの子……」

と西川先輩は頷いた。

「その人、この学校、山蕗高校にいませんか?」

 私はそう聞いた。顔が分かるなら廊下かどこかで見たことがあるかもしれない。

「あ、そういえば見たことがある! 全校集会の時!」

 疑惑は確信へと変わった。向日葵はこの学校にいる。そして今、この街に住んでいる。私たちの顔を見たあと、西川先輩は提案した。

「この辺りは下宿先がたくさんあるから、一軒ずつ探してみたらどうですか? 私も手伝います。向日なんて苗字そうそういないですから、きっとすぐに見つかりますよ」




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