第244話:温泉とおもてなしと騒動と 41
一日三回から四回で赤城の居場所を鑑定スキルで確認している。
一日一回でいいかなと最初は思っていたのだが、一日でものすごい距離を移動してきたことがあったので、ディートリヒ様と相談して一日三回の鑑定になった。
というか、ディートリヒ様や騎士団長はともかく、陛下にはさっさと王都へ戻ってもらいたい。
赤城が俺たちを狙ってくれるのなら問題ないのだが、あちらからすればシュリーデン国は敵国となる。
敵国の王様が目の前にいたなら、狙われるのは間違いない気がするのだ。
そのことを宰相のディートリヒ様だけではなく、直接陛下にも伝えたのだが――
「ここの食事のためならば、多少の危険は致し方ないだろう」
「そうですね。それにウィグル団長がいれば問題はないはずですよ」
「そういうことだ! がはははは!」
……自分たちの陛下を守るためなら食事くらい我慢してもらいたい。
まあ、それだけ真宮や屋嘉さんの料理の腕がいいんだと、とりあえずは喜んでおくとしようか。
防御用魔導具の作成は進み、ある程度の数を確保することができた。
その中でいくつかは陛下に献上させてもらったが、とても好評をもらえてホッとしている。
……ただし、効果を試すために自らを騎士団長やディートリヒ様に攻撃させたのだけは納得できなかった。
だって、効果が発動しなかったらどうなっていたことか。
もちろん、動作確認はしっかりと行ったし、発動することはこっそり行った鑑定で確認していたけど、それでも不安は不安だったのだ。
別の騎士に試させろよな、この野郎!
これでいつ赤城が来ても守りは十分になってきた。
というわけで、俺はディートリヒ様と約束した『魔導具作成における簡単なルール作り』のための鑑定を行うことにした。
俺が鑑定を行い魔導具を作ることは可能だが、それはあくまでも俺の中にある発想の中からしか作り出すことができない。
なので、他の人たちが工夫を凝らしながら作られた魔導具がどのようなものになるのかも気になるし、俺の考えが及ばないところから素晴らしい魔導具が出来上がることだってあるかもしれない。というか、その可能性の方が高いと思う。
この世界の人間にしか気づけないものというのは、結構大事だからな。
「鑑定、魔導具作成における簡単なルール作り」
ディートリヒ様が期待の視線を向けてくる中での鑑定は、成功に終わった。
ディスプレイ画面を共有してディートリヒ様に見せると、何やらうんうんと頷きながらメモを取り、そしてほうほうと言いながら何かを納得している様子だ。
俺も見てみたが、正直なところさっぱりだ。
これを見ただけでわかるディートリヒ様は、やはり研究畑の人間なんだろうな。
「……ありがとうございます、マヒロ様!」
「いえいえ、これくらいなら」
「これくらいだなどと言わないでください。これはアデルリード国の魔導具開発に置いて、大きな一歩になるのですから」
これは早い段階から俺が魔導具を提供しなくてもよくなりそうだな。
「あっ! ディートリヒ様、だったらメールバードの魔導陣も教えておきましょうか?」
「よ、よろしいのですか!?」
「えっ? あ、はい」
あれ? どうしてそんなに驚くんだろうか?
「あれはとても画期的な魔導具です! 遠くの相手に手紙を届けるなど、普通は考えませんよ!」
「そ、そうなんですか?」
「はい! 教えてください、是非にでも!」
まさかここまで食いつかれるとは思わなかった。
そういうことならもう少し早い段階で声を掛けておけばよかったと思ってしまったのだった。
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