第230話:温泉とおもてなしと騒動と 28
翌日は陛下たちから布団の材料についてあれやこれやと質問攻めにされたが、最終的には気持ち良すぎて寝坊したのだと話を聞いた時には笑ったものだ。
当初の予定では三日の滞在で終えるはずだったが、陛下だけではなく多くの者たちが温泉街を気に入ったようで、滞在期間が一週間に勝手に伸びていた。
仕事があって仕方なく戻る者もいたようだが、またこちらに来たいという気持ちは強いようで、転移できる魔導具を購入できないかと詰め寄ってくる者が多かった。
その度にディートリヒ様が間に入ってくれたので事なきを得たが、これは全員で戻った時も大変なことになるなと考えると面倒でならない。
……まあ、その時は送り届けたらさっさと戻ってしまえばいいだけの話だな、うん。
というわけで、陛下たちは最初の三日間で温泉街を一通り満喫してくれたようだが――目的はそれだけではなかった。
「陛下、ディートリヒ様、騎士団長、お待たせいたしました」
「構わん。では参ろうか」
本来であれば最終日となる予定だった三日目の夜、俺は森谷の転移魔法を使い陛下たちの部屋へ転移すると、そのまま全員で密談を行う場所へ再び転移した。
「それじゃあ、いっくよー!」
緊張感のない森谷の声が聞こえてくると、空間が歪み、次の瞬間にはアリーシャたちが待つ別の部屋に転移していた。
「……いやはや、本当に転移魔法というものは便利じゃのう」
「お待ちしておりました、陛下」
到着するとすぐにアリーシャが声を掛けてくれた。
「では、早速始めようではないか――魔の森の有効活用についての話し合いをな」
そう、これが陛下たちを温泉街に連れてきたもう一つの理由である。
こちらから何度も報告をメールバードで送ってはいたものの、やはり実際に見てもらった方が早いし、体感した方がよりわかることも多い。
そして、実際に見て体感したからこそ、ここが大事な場所であり、今後発展していくには最も重要になると自覚してもらえたはず。
それを踏まえた上での話し合いができればいいなとずっと考えていたのだ。
「粗茶でございます」
「おぉ、ありがとう。……これも美味いなぁ」
「美味でございますねぇ」
「うむ! 美味い!」
「……あの、陛下? これじゃあ話が進まないので、飲み物の感想は横に置いといてもらえませんか?」
つまみを出すと食べることに集中しそうだから後ほどと思っていたが、まさか飲み物でも同じことが起きるとは。
「おぉ、そうじゃったな」
「それじゃあ……アリーシャ、説明をお願いしてもいいか?」
「あっ、はい。わかりました」
ん? なんだろう、アリーシャだけじゃなくて、グランザウォール組の視線がめっちゃ俺を向いているんだけど?
そんなことを考えていると、横歩きで近づいてきたグウェインが理由を教えてくれた。
「……陛下に対してあのような態度を取れるのは、トウリだけだと思うよ?」
「……あー……なるほど、理解したわ」
不敬罪にならなくて、本当によかったわ、うん。
そんなことを考えている間にも、アリーシャからの説明は始まっていた。
大きな地図を広げながら魔の森の開拓状況を説明し、その中で兵士や冒険者が駐屯している宿場町や温泉街についても口にしている。
ディートリヒ様と騎士団長は戦争の時に宿場町に足を運んでいるが、今回陛下は転移魔法で城から直接温泉街に来ているため見ていない。
しかし、報告を受けていたことと、温泉街へ実際に足を運んだからだろうか、魔の森でも人は住めると口にしたアリーシャの言葉を、陛下も疑うようなことはしなかった。
「ただ、現状ですと温泉街へ向かうには、宿場町にある転移魔法陣を使うか、過酷な環境が続く雷雨地域を向けていただくしかありません。温泉街に関しては雷雨地域をどうにか排除できないか、もしくは安全に到着できる別ルートを探る必要があると考えています」
「であるな。まあ、我であれば転移魔法陣で金を払って安全に移動するがのう」
「へ、陛下からはお金など頂きませんよ?」
「気持ちの問題じゃ、がははははっ!」
まあ、払ってでも来たくなるよな、温泉街は。
そして、温泉街の問題とは別で気になっている内容をアリーシャは口にしていく。
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タイトル:職業は鑑定士ですが【神眼】ってなんですか? ~世界最高の初級職で自由にいきたい~
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