第220話:温泉とおもてなしと騒動と 20

 温泉街の周囲はすでに魔獣狩りが済んでいる。

 しかし、奥の方からはまだまだ魔獣が外へと進出してきており、狩っても狩っても、狩り足りないのが現状だ。


「ふんっ! なんだ、この体たらくは! これではオンセンガイとやらを守ることもできないのではないか!」


 ……そして、魔獣がいる場所に到着して早々、レジェリコが無意味な文句をつけまくっている。

 耳障りであることに変わりはないが、こちらから文句を言うことは憚れる。

 こういう時、貴族の相手は面倒だなぁ。


「がはははっ! これは面白いぞ! これほど歯ごたえのある魔獣は久しぶりだなあ!」


 ……騎士団長の場合は耳障りではあるものの、レジェリコとは違いやる気満々なので非常にありがたい。

 他の騎士たちも騎士団長と同様にやる気を見せているが……こちらはライアンさんやヴィルさんたちにも準備してもらっておこう。

 いくら王都の騎士たちとはいえ、一時的に能力を上げる果物がなければ限界があるだろう。

 素の能力で魔獣とやりあえるのは、騎士団長くらいかもしれないしなぁ。


「それでは、最低でも四人一組になってください。魔の森、それもここは宿場町からも奥まった場所にありますので、魔獣のレベルも高いです。気を引き締めて――」

「陛下! 陛下は私がお守りいたしますので、こちらへお越しください! さあ、さあっ!」


 ……うっぜぇ~。

 これ、もしも陛下が行くとか言ったら、騎士団長もついていかないといけなくなるんじゃないのか? もしそうなったら……うん、怒りだしそうだな。


「何を言っているか、レジェリコ! 陛下は私と行動するのだから、お主は自分の身でも守っていろ!」

「何を言うか! それならばお前がこちらに来るべきだろう、ヴィグル!」


 うーん、騎士団長とレジェリコ、立場的にはどちらが上なんだろうか。

 まあ、どちらにしても面倒を起こしているのはレジェリコなので、本当に止めてもらいたい。


「アリーシャ様! トウリ様! 護衛の準備が整いました!」


 そこへライアンさんからの報告が入った。……入っちゃった。

 護衛の準備ができたということは、その中にいるんだよなぁ……レレイナさんが。


「えっ? お、お父様?」

「ん? 貴様、レレイナか! 私の指示を無視しおって、どういうつもりだ!」


 ほらな~。まーた面倒を起こしちゃったよ~。

 ……まあ、二人が顔を合わせるのも時間の問題だったし、魔の森の視察でレレイナさんの実力を見せつけるつもりだったから、プラスに考えるとするかぁ。


「レジェリコ様。レレイナ様は魔の森の開拓に大変尽力してくれております」

「ふんっ! そうでなければマグワイヤ家の面目が立たんわ! しかし、こいつは次期当主の息子がここに向かうと言っても返事を一向に返さんかった!」

「それは、私が不要だと言っていたのですよ」

「……な、なんだと?」

「あの、アリーシャ様?」


 アリーシャがレジェリコに喧嘩を売ったぞ。

 当事者のレレイナさんは困惑しているが、それだけアリーシャにとってレレイナさんが大事な人になったということだろう。

 俺たちにとってもレレイナさんは欠かせない存在になっているので、その気持ちは痛いほどわかるけどな。


「貴様程度の奴が、マグワイヤ家当主である私の指示に文句をつけていたというのか! 不愉快だ、非常に不愉快だ!」

「何を言われましても、レレイナ様は我々にとって欠かせない存在でございます。彼女は、他の誰かが取って代われるような存在ではございませんから」

「私の息子が愚女に劣るというのか!」

「……愚女、ですか」

「そうだろう! このような辺境の地に派遣せよと言われたから貴様を送ったのだ! そうでなければ王命だ、本来ならば息子を派遣して十分な成果として――」

「ほほう? それは聞き捨てならないのう、レジェリコよ」


 あー……この人、自分から言っちゃったよー。


※※※※

【書影が公開されました!】

近況ノートに画像をアップしているので、ぜひご覧ください!


近況ノート:https://kakuyomu.jp/users/toguken/news/16816927861191816796


最高のイラストです!

皆様、ぜひともよろしくお願いします!

※※※※

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