第205話:温泉とおもてなしと騒動と 7

「「「「「「待ってました!」」」」」」


 今度は女性陣から一斉に声があがった。

 さすがは女の子だなぁ。デザートは別腹というが、本当だろうか。……正直、俺はすでにお腹がいっぱいなんだが。


「はい、真広君」

「ありがとう、屋嘉さん」


 ニコリと微笑みながら自ら作ったデザートをテーブルに置いてくれる屋嘉さん。

 ……あれ? なんだろう、今ものすごく癒された気がする。

 最近は忙しくしていたし、ここにいる女性陣は全員が戦闘職だったから、支援職の女性は新鮮なのかもしれない。


「……ねぇ、桃李君?」

「桃李~? 今、変なことを考えていなかったかしら~?」

「ん? そうなのか、真広?」

「そんなわけないだろうが。ほら、さっさと食べようぜ」


 女性はどうしてこうも鋭いのだろうか。……そして、皿に載っているデザートの量が俺よりも倍近く多いんだが。


「……ん? あれって、ライアンさん?」


 意外や意外、ライアンさんの皿にも女性陣と同じ量のデザートが載っている。

 ……ライアンさんって、甘党だったんだ。


「「「「「「いっただっきまーす!」」」」」」

「……いただこう」


 そして、女性陣とライアンさんがデザート――ふわっふわのシフォンケーキを口に運んだ。


「こ、これは!? なんて柔らかさだ!!」


 最初に感想を口にしたのがライアンさんでしたかー!


「なんですかこれは!」

「す、すっごく柔らかいよー!」

「ふわあっ! こんなの、食べたことないですー!」

「久しぶりに食べたら、止まらないわー!」

「やっぱりすみれちゃんのケーキは最高ね!」

「うふふ。本当、とっても美味しいわ」


 次いで女性陣からの感想が耳に届いてくる。

 俺も口に入れたけど、確かにこれは食べたことがないくらいに美味しいな。日本にいた頃にも、これより美味しいケーキは食べたことがないかも。

 まさか同級生にこれだけのケーキを作れる人物がいたとはなぁ。


「皆さんのお口に合ったみたいで、よかったです」

「これを合わないなんて言う方はいませんよ、ヤカさん!」

「そうですよ、スミレ様!」

「あ、ありがとうございます」


 アリーシャとリコットさんから手放しに褒められたからか、ヤカさんは恥ずかしそうにしている。


「うむ。これならば陛下にお出ししても問題はないだろう」

「ほ、本当ですか?」

「あぁ。だから、自信を持っていいだろう。私も堪能させてもらった」

「ありがとうございます!」


 そして、ライアンさんの褒め言葉には力強く答えている。

 やはり年の功だろうか、言葉の重みが違うな。……まあ、意外な人物からの褒め言葉だったのか、円たちは唖然としていた。


「うふふ。ライアンさんは甘党でしたね」

「意外ですよね、副兵士長!」

「わ、私に振るんじゃない!」


 ここでライアンさんをいじってくるあたり、リコットさんの肝は座っているなぁ。ヴィルさんはまあ、直属の上司だからああなるのは仕方ないか。


「真広君はどうかな?」

「ん? あぁ、美味しかったよ。こんな美味しいケーキ、日本でも食べたことがないな」

「本当! うふふ、ありがとう」


 ……はぁ、本当に癒されるわぁ。


「それで……どうかしら、アリーシャさん? ライアン様が仰ったように、陛下に出しても問題はなさそうかしら?」

「はい! 料理もデザートも全く問題ありません! あとは品数を増やして、好みに合ったものが用意できれば完璧です!」


 アリーシャの答えにライアンさんが大きく頷いているが、あなたの頷きはデザートに関してでしょうよ。まーだ食べているし。


「そう、よかったわ。二人はどうかしら? 品数を増やすことはできそう?」

「俺は大丈夫! 食材も豊富だし、今から楽しみで仕方ないよ!」

「私も大丈夫です! 砂糖の代わりになる食材もありましたし、色々作れると思います!」

「ほほう! それは楽しみだ!」


 ……ライアンさ~ん。


「……ごほん! 失礼」

「うふふ。それではヤカさん、マミヤさん。陛下をお迎えする時の食事を、よろしくお願いいたします」

「「はい!」」


 こうして、大満足の中で試食会が終わったのだった。

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