第188話:予定外のサバイバル生活 55
俺は鑑定スキルが表示していた新への試練。それを乗り越えた彼がどのように変わったのかが気になってしまい、こっそり鑑定を掛けてみた。
すると、職業の欄に初めて見るマークが付いていて首を傾げてしまう。
「……剣聖、
剣聖と書かれた文字の横に+と表示されていたのだ。
これはいったいどういう事なのか。
単純に考えればただの剣聖よりも強くなったと考えられるけど、それがどれだけ強くなったものなのかがよく分からない。
すると、表示の中に+に関する説明書きがある事に気がついた。……便利だが、鑑定スキル。いや、鑑定士(神眼)。
「何々? ……通常の職業よりもステータスの伸びが大きくなり、さらに職業としての動きに上方補正が掛かるのか」
目を引くのはやはりステータスの伸びが大きくなる、というものだろうか。
これからレベルが上がるたびに今まで以上の成長をしていくんだからね。
それに、剣聖としての動きに上方補正が掛かるという事であれば、戦闘にも余裕が出るだろうし、結局はレベルも上がりやすくなる。
全てが良い方向へ進むようになっているんだな。
「どうしたんだ、真広?」
「あぁ、うん。新の事を鑑定していたんだ」
「俺の鑑定?」
「これを見てくれ」
俺がディスプレイ画面を新たに見せると、新は+による驚きの効果に目を見開いていた。
「……な、何なんだ、これは?」
「俺も初めて見たよ。でも、デュラハンを一人で倒した事で生まれたものなのは間違いないな」
「……そうか。だから、あの時も俺に一人でやれと言っていたんだな」
「爆発的な成長とか出てきたからな。まあ、これほどの成長があるとは思わなかったけど」
デュラハンを倒した事でレベルも上がっており、現在の新はレベル50。
今までのレベルアップの時よりも確かに数値の伸びが大きくなっており、筋力と耐久力だけではなく、ついに速さの数値も1000台に乗ってきた。
……新もついに、人外の領域に到達してしまったんだなぁ。
「……だが、デュラハンとの戦闘は紙一重だった。それに、森の奥にはさらなる強敵がいるんだろう?」
「まあ、そうだろうね」
「そうか。……まだまだ、精進が必要だな」
おっと。新はさらに人外の領域を広げていくようだ。
……まあ、異世界人の時点でこの世界の人間からすれば人外に近い存在なんだけど。
そんなことを考えていると、森谷が一匹の従魔と共に戻ってきた。
「お待たせー」
「待ってました!」
「あはは! ユリアちゃんは正直だねー。それじゃあ紹介するね。この子が君のために用意した従魔だよ」
森谷の後ろからひょっこりと顔を出している一匹の従魔。
耳がぴょんと上に長く、くりくりの大きな瞳に前へ伸びた鼻。
茶色い体毛が風に揺れており、モフモフ度はハクに勝るとも劣らない、そんな感じだ。
「……グゥオー?」
「……か、可愛いいいいぃぃ!」
「カンフーガルーのフォスだよ」
「カンフーガルー? ……見た目、完全にカンガルーだな」
「とっても可愛いです! 大樹さん、ありがとうございます!」
「構わないよ。それじゃあ、早速従魔契約をやっちゃおうか!」
「はい!」
満面の笑顔で元気よく返事をしたユリア。
森谷も楽しそうに従魔契約を行うと、フォスはゆっくりとユリアへと近づき、頭を軽く擦りつけた。
「……これからよろしくね、フォス」
「……グゥオー!」
「王都に行ったら、騎士団長をぶっ飛ばすよ!」
「グゥオ? ……グゥオー!」
お、おぉぅ。なんだろう、めっちゃやる気になっている気がする。
ステータスだけを見ればフォスの方が圧倒的に強いんだが……騎士団長、ご愁傷様です。
「さーて! それじゃあ、ここで話をするのもなんだし、僕の家に招待するよ!」
カタカタと音を鳴らしながらそう口にした森谷の案内で到着した彼の家。
……戻ってきたというのはおかしな表現だが、グランザウォールに戻ってから王都へ向かい、ようやく戻ってきたのだから仕方がないか。
ライアンさんたちも疑う事なくついて来てくれて、本当にありがたい。
後は――俺が森谷の禁忌魔法による代償を解消するだけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます