第165話:予定外のサバイバル生活 33
衝撃的な事実を目の当たりにした後、俺たちは落ち着いて話ができる場所に移動しようとなり、アリーシャたちが泊っている宿屋へ移動した。
グランザウォールに戻るという選択肢もあったが、アリーシャとレレイナさんがすぐに話をしたいと前のめりに希望してきたからだ。
俺としてもなるべく早く話をしたいと思っていたのでありがたい提案だった。
「それじゃあ、タイキ・モリヤは本当にごく普通の考え方を持っている方なのですね?」
「まあ、異世界人である事に変わりはないから、この世界の普通というよりも、俺たち寄りの考え方を持っている普通って感じかな。それでも、長くこの世界と関わっている人だから、アリーシャたちに寄った考え方もできるはずだけどね」
見た目がスケルトンという事を除けば、ごく普通の人間だと思う。
……いや、神級職だから普通とは言い難いけど、そこは置いておく事にしよう。一応、メールバードでは伝えているわけだし。
「というわけで、森谷をここに連れてくる事を前提に色々と動きたいと思っているんだ」
「それは私たちとしてもありがたいのですが……その、神級職ですよね?」
「あぁ」
「……はあぁぁぁぁ。また、陛下へ報告しないといけませんね」
ものすごく深いため息がアリーシャから聞こえてきた。なんだろう、少しだけ申し訳ない。
「そこに関しては俺も行くつもりだ。王都の人間たちの方が森谷に対する考え方が凝り固まっているだろうし、従魔の事も伝えないといけないからな」
「それは……えぇ、非常にありがたいです」
「ならば俺たちも行った方がいいんじゃないか?」
「わ、私も行くよ! タイキさんのためだもの!」
「いや、俺とサニーだけでいいよ」
二人はそう言ってくれたが、俺はそれを断った。
何故なら、みんなも二人と話をしたいと思っているだろうからだ。
円はユリアと一緒にいた方がいいだろうし、新にはヴィルさんと兵士長が話を聞きたがるだろう。もしかしたら、模擬戦をしたいと言い出すかもしれない。
それに、みんなが頑張ってくれた分、俺たちが頑張ってみんなを休ませなければならない。
二人とも相当レベルが上がったし、サニーとグレゴリもここでは異常なまでの強さを持っている。
……もしかすると、開拓地を維持するだけなら二人と二匹だけで事足りるかもしれないな。
「む……まあ、そういう事なら」
「仕方ないかなぁ」
「ねえ、桃李。私は一緒に行ってもいいかな?」
二人が納得したと思ったら、予想外のところから声が掛けられた。
「円と一緒じゃなくてもいいのか、ユリア?」
「勝手にセットで考えないでくれない?」
「だって、お前たちって親友だろ?」
「親友だけど、常に一緒にいるわけじゃないのよ?」
ユリアの言葉に円が大きく頷いている。
「王都へ行くなら護衛だって必要でしょう? それに、王都で気分転換をするのもありじゃないかしら」
「あの、トウリさん。私はユリアさんがいてくれるととても心強いのですが……」
……まあ、二人がそう言っているなら問題はないか。
「分かったよ」
「やった! これで騎士団長と戦えるわ!」
「……は?」
こいつ、今ものすごく恐ろしい事を言わなかったか? もしかして、気分転換が騎士団長との殴り合いなのか?
「だって、負けっぱなしじゃ悔しいじゃないのよ!」
「それはそうだけど、それって気分転換になるのか?」
「なるわよ!」
「あ、はい。分かりました」
そこまで即答されると、もう何も言いませんとも。さすがは脳筋、俺には理解ができません。
というわけで、王都には俺とサニー、アリーシャとユリアで向かう事になった。
しかし、言ってすぐに陛下と謁見ができるわけもない。
しばらくは待たされるだろうし、森谷には悪いがもう少しだけ待っていてもらうしかない。
「王都にはいつ出発しようか?」
「明日でもいいと思いますよ」
「それもそうか。早い方が待たされる時間も短くなるかもしれないしな」
「いえ、陛下からは、トウリさんが戻ってきたらいつでも構わないから顔を出すよう、言われているんですよ」
「…………は?」
今、アリーシャからとんでもない爆弾発言が飛び出したような?
「それ、マジか?」
「はい、マジです」
「……す、すぐに出発しよう! 陛下を待たせるわけにはいかないだろう!」
「あ、それもそうですね。それじゃあ、準備ができ次第向かいましょう。ユリアさんもいいですか?」
「えぇ、大丈夫よ。三人が戻ってくるって聞いた時点で、準備はしていたからね!」
お前も知っていたのかよ、ユリア!
くっそぅ。なんだろう、俺だけ戻ってきてもゆっくりできないじゃないか、ぐすん。
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