第26話 重い想いを、彼にぶつける為に

「とは言っても、どうしますか?私と櫛名田くしなだ先輩の2人で一緒に俊先輩に詰め寄りますか?」

 私とあおいちゃんが声高らかに再び恋敵である宣言をしたが、まだ問題はあった。


 今しがた葵ちゃんが言ったように、ね。


「それもいいんだけど、そしたら俊はすぐにでも答えを出そうとするでしょ?それじゃあダメなの」

 葵ちゃんから投げかけられた質問に私は自分の考えを述べた。

 しかし、葵ちゃんは私が意図していることが分からなかったのだろう

「それではダメ……なんでしょうか」

 そう言って首を傾げる。

 そんな葵ちゃんの仕草を可愛いと思いつつも、私は彼女が理解しやすいようにして伝えることにした。

「私たちが俊の事を色々と考えたように、俊にも私たちのことを色々と考えて欲しいの」

 すると、上手く彼女に意図が伝わったのだろう

「確かに、そうですね……。俊先輩にも少し悩んでもらわないとですね!」

 小さく頷いた後、少し悪戯顔をして私を見つめる葵ちゃん。

「そういうこと」

 そう言って私はそれに笑顔で返した。



「それで、告白の順番はどうするんですか?私としてはやっぱり俊先輩と付き合いの長い櫛名田先輩が先の方がいいと思うんですが」

 そう言って、私に遠慮するかのように先を譲る葵ちゃん。

 けれど私はそれではいけないと思い

「それもあるんだけどさ……、やっぱり葵ちゃんがいいと思うの」

 気づけば声に出していた。

「……何故ですか?」

 当然、葵ちゃん本人からしたら不可解だろう。

 眉をひそめている彼女を見つめながら私はそう思った。

 とは言え、葵ちゃんがいいと思い、それを口にしたのにはきちんと理由があった。それが何かといえば

「元々は俊と葵ちゃんの仲を取り持つために動いてたんだもの。それはやっぱり最後までやるべきかなって思ったのよ」

 こういうことだ。

「……櫛名田先輩、ありがとうございます」

 どうやら私は彼女が納得のいく回答ができたようで、軽く会釈をする葵ちゃん。



「さて、次はどうやって告白するかだけど。葵ちゃん、いい案ある?」

「ええっ、急に話を振られても……。それに櫛名田先輩が考えた方が……。俊先輩の幼馴染なんですし」

 私が唐突に話題を変え、しかも急に話しかけたことで驚きを隠せていない葵ちゃんに私は愛おしく思えた。

 とは言え、私1人で考えてはダメなのだ……。根拠はないけれど2人で考えないといけない気がする。

「確かに付き合い長いんだけどさ、未だにアイツの生態分からないのよね〜。基本おっぱいの事だし。かと言ってそれだけだと思ってると、時々かっこよくなるしさ」


 そう、付き合いは長い。

 けれどそれだけだ。付き合いが長い以外は葵ちゃんと何ら変わりはないのだ。

 だからこそ

「それに、やっぱり私としては葵ちゃんと考えたいのよね。どうやったら俊を悩ませられるか、ってね」

 葵ちゃんとでなければいけないと思った。

「櫛名田先輩、今ちょっとだけ悪い顔でしたよ。……でもそうですね。少しぐらい私たちのことで悩んで欲しいですね」

 きっと葵ちゃんの言葉には『 恋愛対象として』と言う意味が含まれてるのだろう。

 それを含めて

「そういうこと」

 私は大きく頷いた。

「それじゃあ、作戦会議始めましょうか!」


 今度は私からではなく、葵ちゃんから声を出し始めたのだった。

 そう、2人してかからないといけないのだ。

 そうでないとあのおっぱい星人はこっちを見てくれないのだから。

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