第23話 恋に未熟な未成熟な美少女は悩む
「さて、それじゃあ、水沢さん。簡単に説明おねが〜い」
生徒会室に着くと早々に、仲木戸先輩はいきなり私に相談内容を聞いてくる。
「そうですね、では簡単に」
私は先程の仲木戸先輩の冷たい目が印象に残りつつも、その恐怖を飲み込むかのように大きく息を吸った。
そして飲み込んだ恐怖を乗り越えるかのように私は仲木戸先輩に相談することにした。
「私と2年の先輩の
「ちょっと待って！？さすがに情報量が多くて大変だから！全然簡単にじゃないわよ！？」
スラスラと私が説明していると、仲木戸先輩が慌てて止めに入った。
「……すいません、焦ってしまいました」
どうやら相当調子が狂ってしまっていたのだろう。私としたことが、とんだ失敗である。
「もう1回、今度こそ簡単にお願いね」
仲木戸先輩は私に念押ししながら説明を促した。
今度こそ、しっかり伝えないと。
そう思って、私は説明しようと口を開いた。
「俊先輩と付き合いたいです」
「……一気に簡単になったわね」
何やら困っている様子の仲木戸先輩。何がおかしいのだろうか。
「簡単にって言われたので」
そう、簡単にと言われたから簡単に説明したまでなのである。
私は悪くない。
そんなことを考えていると、仲木戸先輩はポリポリと頬を掻きながら
「今のは簡単って言うより、結論じゃないかしら〜？まぁ、いいわ。何となくわかったし〜」
と言った。
やはり、仲木戸先輩は
何故なら、
「つまりは、櫛名田
「そういうことです」
私の悩んでいることをピタリと当ててしまうのだから。……こういう所も私はこの先輩が嫌いだ。
「結論から言わせてもらうとね、そんなこと出来ないわよ〜？」
突然、仲木戸先輩がそんなことを言い出した。
「え……」
正直彼女が何を言っているのか一瞬わからなかった。
けれど、口調が真面目そのものだった。
そんな、仲木戸先輩からの言葉に私が戸惑っていると
「だって、あなたも櫛名田さんもどちらもおっぱい君のことが好き。片方が付き合ったら、気まずくなるのは当たり前じゃない」
詳しい説明をしてくる仲木戸先輩。
「…………」
私はなんの反応することも出来なかった。
「……そういう反応するってことは、恋をするってことをよく分かってなかったみたいね」
何でもかんでもわかってるような口調を仲木戸先輩がまたしてくる。……本当にどこまで分かっているのだろうか、この人は。
「そう、なんでしょうか……？」
私は仲木戸先輩に逆質問をする。
自分のことなのに、私は自分自身のことが分からなくなってきてしまった。
すると、仲木戸先輩から質問の答えが返ってきた。
「だって、あなた櫛名田さんかおっぱい君を取るか決めきれてないじゃない」
「…………っ！！」
図星だった。
どっちも、取りたいのが本音だったからだ。
今の私には片方だけを捨てることなんて決めることなんて出来なかった。
またしても私の考えを読んだのだろうか、仲木戸先輩はこんな忠告をしてくる。
「もちろん、恋敵同士でも祝福できる関係になることもあるけど、必ずしもそうとは限らないからね〜」
と。
私は辛うじて
「私と櫛名田先輩ならきっと」
と反論してみた。
のだが、あまりにも自信が無いのが彼女に伝わったのか
「なら、試してみたら〜。……本当に覚悟があるなら、だけど」
と煽られる。
しかし、仲木戸先輩から色々と聞くにつれて徐々に自身を無くしていった私は
「それは……」
言い返すことが出来なかった。
すると、仲木戸先輩はまたしても真面目な表情で
「あなたは何のために毎日おっぱい君にアプローチしてきたの？なんでおっぱい君にアプローチしていたの？それとも本当におっぱい君が好きなのか、1度見つめ直してみたらどうかしら？」
と私に問いかける。
「私がどうして俊先輩が好きなのか……」
私はただその言葉を繰り返すことしか出来なかった。
そしてそのまま結論が出るはずもなく、生徒会室を出ようとした時
「……恋に未熟な水沢さんがどんな結論を出すのか、楽しみにしてるわ」
仲木戸先輩が私にそんなことを告げ、そのまま私を部屋から出した。
「今の私に答えなんて出せるのかなぁ……」
そう呟きながら、私は階段を降りながら自分の教室へと戻っていった。
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