第22話 先輩と後輩、恋する乙女のいがみ合い
休み時間になり、私は気づけば1年の教室のある1階から階段をゆっくりと登り3年の教室のある3階へと来ていた。
ゴクリと唾を飲み込み、覚悟を決め私はとある3年の教室と扉をガラッと開け声を上げた。
「あの……すいません、
扉のすぐ近くにいた先輩に声を掛け、仲木戸先輩を呼んで貰えるよう伝えた。
すると、来るのがわかっていたのだろうか、間もなくして赤毛三つ編みの色気のある美少女が私の元へとやってきた。
「あら、随分早かったわね、水沢さん。朝に相談の提案して、お昼休みの今来るなんて相当切羽詰まってるってところかしら〜?」
と、開口一番に煽りを入れてくる赤毛三つ編みの美少女、もとい仲木戸 ラン先輩。
なるほど、先輩がその気なら、と私は
「正直、あなたに相談するのなんて極力したくないんですが、悔しいことに今頼れそうな人仲木戸先輩しか居ないんですよ」
そう、今はもう仲木戸先輩しか居ないのだ。
部活の先輩である俊先輩はむしろ今回の悩みの原因であり、俊先輩の幼馴染で私の味方だった櫛名田先輩は今朝の1件でむしろ謝らなければいけないし、俊先輩の友人である種田先輩に関してもあとはお願いしますと頼んでしまった。
種田先輩にお願いしても尚、それでも不安は治まらなかった。とは言え同学年の人に相談しても俊先輩のことを知らないだろうし、私の素の姿を教えなきゃいけなくなる。
それなら、もういっその事、俊先輩や私の事を知っている仲木戸先輩の方がまだマシなのだ。
その、私の仲木戸先輩で妥協する気持ちが表に出ていたのか
「とても嫌そうにしながら面と向かって言ってくれるのね」
と彼女が呟く。
が、しかし
「そういう所私は嫌いじゃないわよ〜。……水沢さんはどうやら違うみたいだけど」
仲木戸先輩はニコニコとあえて、私を挑発するかのような喋り方をする。
どうしてそんな喋り方をするのか分からなかったが、プルんと揺れる彼女の整った胸を見て私は諦めた。
我慢するのを諦めた。
「どうせ私のこと調べてるんですよね?だったら隠す必要ないかなと。ええ、私はあなたのことが嫌いです。その整った胸も、その柔らかそうな胸も、そしてその勝ち誇ったような余裕そうな表情と喋り方、全てが嫌いです」
私は彼女の胸に2回と顔に1回指をさしながら私は溜まりに溜まった
少しは彼女のマイペースを崩せれば、と思っていたが
「私はむしろ堂々と嫌いって言ってくるあなたの事をますます好きになってしまったわ。……ねぇ、もっとちょうだい?」
どうやら全然効いてないようだった。
むしろ
「……なんか先輩怖いです。何企んでるんですか?」
畏怖すら感じた。何なのだろうかこの人は。
意味もなく挑発して、しかも私からの悪口をもっと頂戴……?この人おかしい……!何かがおかしい!!
私が仲木戸先輩に対する恐怖心に襲われていると、彼女は
「そうねぇ、強いていえば……あなたともっとお話したいやってところかしら」
いつもよりもより一層色気のある声と表情でそんなことを言った。
異常だ……。
そう思った私は意を決してこんなことを口にした。
「先輩絶対なにか隠してますよね?……正直、女の勘センサーがビンビン反応してるんですけど」
何かなければそれでよし。むしろ何も無いでくれと思っていると、仲木戸先輩の表情が途端に無になった。
そして冷たい口調でこんな言葉が放たれた。
「……勘のいい子は少し嫌いかな」
その時、一瞬時間が止まったのかと錯覚した。
いや少なくとも私の心臓が少なくとも一瞬止まった。それほどまでに衝撃的でそして……、とても恐ろしかった。
そんな凍りきった私の周りの空気を温めようと
「なーんてね。それよりも私に何か相談しに来たんじゃないの?しなくていいの〜?」
いつものような表情や口調で再び私に話しかける仲木戸先輩。
「……相談、真面目に乗ってくれるんですか?」
私は恐る恐る仲木戸先輩の方を見つめる。
「それはもちろん、私が言い出したことだしね〜。約束は守るわよ」
明るい口調で抑揚をつけながら仲木戸先輩が喋る。
目はさっきの無の時とは違い温かみがあった。
「……先輩に頼るのはとても
私は懲りずもトゲのある言い方をしたが先輩はさほど気にする様子もなく
「はいは〜い。それじゃあ、生徒会室へ行きましょうか」
場所の移動を促す。
しかし私は場所の移動する意味を見いだせず
「生徒会室?」
首を傾げた。
何故?ここで話せばいいんじゃないのか。
そう考えていると、仲木戸先輩がニヤニヤと周りを見渡しながら
「みんなに聞かれながら相談したい?私はそれでも構わないわよ。むしろそうする〜?」
と私に言った。
仲木戸先輩が生徒会室で、と言った意味をようやく理解した私は
「それは絶対嫌です!生徒会室でお願いします!」
と、さっきまでの態度を改め情けなくも仲木戸先輩へと頼み込んだ。
私は俊先輩や種田先輩のように自分の性癖をオープンにできるほど強い心臓では無いのだ。
2人がよくやっている
私がそんなことを考えていると
「それじゃあ、ついてきて〜」
仲木戸先輩は再び生徒会室へと向かい歩き出した。
その背中はどこか頼りがいのありそうで、しかし、なにか企んでいそうなそんな気がした。
あわよくば、その企みが私に得のあるようなものでありますように……。
そう願いながら私は仲木戸先輩の後に続いて生徒会室へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます