第12話 踏んだり蹴ったり、おっぱい星人にロリ本
「さ、サイボーグ!?」
俺の言葉に驚いたラン先輩は、俺が放った言葉を繰り返す。
そして、俺があまりにも突拍子のないことを言い出したからだろう
「俊どうした!?ラン先輩にサイボーグって……」
文也はとても心配そうにこちらを眺めていた。
けれど俺は頭に血が上りすぎて、ラン先輩に対する暴言を止めることができなかった。
「自身のおっぱいに、
我ながら恐ろしいおっぱい理論である。
けれども、それだけラン先輩が豊乳運動していたという事実が俺には受け入れられなかったのだ。
「ちょっ!俊落ち着け、荷物まとめ始めてどうしたんだよ!」
いそいそとリビングに広げられた自身の勉強道具を片し始める俺に、慌てる様子の文也。
それでも俺は手の動きを止めなかった。
それどころか
「いいですか、ラン先輩!俺は先輩のおっぱい、理想には物足りない大きさでしたが結構好きだったんですよ?それなのに……それなのに……!」
心の声の叫びが俺の意に反して、口から漏れ出る始末。
すると、いつの間にかラン先輩の様子がおかしくなっており、
「サイボーグ……。私がサイボーグかぁ……ふふふ……」
虚ろな目をしてブツブツと呟き始めていた。
「先輩……?ちょ、俊一旦落ち着け?先輩の様子おかしくなってきてるから」
文也は慌ててラン先輩の介抱に向かった。
その文也の行動で俺は我に返った。
とは言っても、言ってしまった言葉は引っ込めることが出来ない。
徐々に冷静になっていく頭で自身がラン先輩に向けて放った言葉を思い返すだけで、申し訳ない気持ちになっていった。
しかし、
「ふふ……ふふふ……」
様子がおかしくなってしまったラン先輩を見ているのも辛くなってしまい
「……すまん文也、俺先に帰るわ。雨止んでるっぽいし。ラン先輩、また学校で」
俺は、一足先に仲木戸家を後にすることにしたのだった。
文也が俺を呼んでいたが、俺はそれを振り切った。
とは言っても、後悔してない訳ではなく、むしろ後悔しかしていなかった。
「…………やっちまった。メールで謝っとかないと……。って愛咲からメール来てるじゃん」
急ぎ謝罪メールをラン先輩と文也に打とうとスマホを取り出すと、メール通知欄に『櫛名田 愛咲』と表示されていた。
なんだろうと、メールを開封すると
『俊、あんた種田くんと渚先生に何かしたの?』
と書かれていた。
「……なんのこっちゃ。っと、メールでラン先輩に謝っとかないと!愛咲には後ででいいや」
一体なんの事を言われてるの分からなかった為、愛咲からのメールを閉じ、俺は急いでラン先輩と文也に謝罪メールを打ち込み送信した。
許してもらえるかは分からないけれど、そんなことは二の次でとにかく謝りたくて仕方なかった。
*********************
幸いにもラン先輩と渚先生の家から俺が借り住んでる家とはさほど離れておらず、徒歩15分ほどの距離だった。
その為、スマホのGPS機能を使いなんなく自分の住んでる家に着いたわけなのだが……。
「なんじゃこりゃぁぁぁ!!!」
リビングに入った途端、目の前にはお宝のおっぱい本!!!
では無くロリ本がリビングの至る所に広げられていた。
金髪ツインテールなブルマ体操服を着た小学生が表紙のアイドル誌、銀髪碧眼な外人ロリータが表紙のコスプレ誌などなど。
こんな感じの俺とは真反対の趣味を持つ人は一人しか思い浮かばない。
「……これ、
そう、小柄で青髪ショートヘアのロリコンな美少女 、水沢 葵しか思い浮かばなかった。
しかし犯人が誰であるかよりも大事なことがある。
「てか、俺のお宝はどこいった!?」
それは、コツコツと収集してきた俺のおっぱい本の山たちである。この際、どうやって葵ちゃんが部屋に入ってきたかどうかはどうでもよかった。
すると、元々おっぱい本の山があった所に紙が1枚貼り付けられてあったことに気づき、俺はそれに書かれていた文字を読み上げることにした。
「えぇっと、『あんたの本、私が預かったから帰ってきたら電話よろしく 葵ちゃんの味方の
まさか愛咲が葵ちゃんの味方をするとは思っておらず、この部屋に引っ越してきた際に彼女に合鍵を渡していた事が裏目に出てしまったようだ。
いや、普通思うまい。俺を心配して一緒に地元から離れた高校に着いてきてくれる幼馴染に裏切られるなんて。
俺はもう訳が分からなくなりながらも、愛咲に電話をかけることにした。
『もしもし、俊?どうした〜?』
コールをかけ始めしばらくすると、陽気な声で愛咲が電話に出る。
「もしもしじゃなくてだなぁ!部屋のこれどういうことだよ!」
俺は声を荒らげて愛咲に事情説明を求めた。
すると愛咲は
『あー、えっとね。……普段の俊に対する
可愛げな声でそんなことを言い出した。
「憂さ晴らし……?俺に?」
当然俺は困惑である。愛咲にそんなことされる覚えが無かったからだ。
しかし、それは俺の勘違いのようで
『うん。色々と毎日おっぱいおっぱいうるさかったしねぇ〜。だから葵ちゃんと意気投合してやっちゃいました☆』
愛咲にとっては普段の俺に少なからずうんざりしていたようだった。それが葵ちゃんとの件と重なって爆発してしまったようなのだが……。
「そこ意気投合するんじゃねぇよ……。なんだよ、説得してくれるんじゃ無かったのかよ……」
愛咲自身が、私に任せてと言っていたのだ。
心変わりするにしても早すぎる為、もはや呆れるを通り越してあっぱれである。
と、俺の
『そうだったんだけどねぇ、今回ばかりは葵ちゃんの味方をすることにしたの。てことで今は葵ちゃんとお泊まり会やってるからまた明日ね〜。あ、本は無事だから安心して。それじゃおやすみ〜』
自分勝手な言い分を繰り広げた挙句に、電話を切ろうとしていた。
当然俺は必死になって愛咲を説得しようとしたが、間に合うはずもなく
「おい、愛咲!今葵ちゃんと一緒にいるのか!?おい!?……って本当に切りやがった……」
ツーツーと不通音が耳元で鳴るだけだった。
ラン先輩を傷つけてしまうわ、葵ちゃんのロリ本と俺のおっぱい本をすり替えられるわ、なんなら頼りにしていた愛咲に裏切られるわで、踏んだり蹴ったりな放課後である。
*********************
俊との通話を強制的に切った愛咲を1人の華奢な女の子が、着慣れない部屋着を見に纏い、心配そうに愛咲の背中を見つめながら恐る恐る声をかける。
「
その声に反応し、愛咲は声をかけてきた女の子、水沢 葵の方へと体を反転させる。
「んー、まぁ結構怒ってたかな」
愛咲はこめかみをポリポリと軽く引っ掻きながら困り顔で葵にそう伝える。
「明日大丈夫なんですか……?」
俊と愛咲、2人の仲を心配し質問する葵。
すると愛咲は葵に心配させまいと笑顔でこう伝えた。
「大丈夫。伊達に長いこと俊と幼馴染やってないわよ。それにおっぱいおっぱいうるさかったのは事実だしねぇ」
と。
葵自身、愛咲がほぼ本心で言っていることに気づいてはいるがやはり1つ年上ということもあり、
「それは確かにそうですが……」
どこか遠慮気味な態度であった。
そんな葵の様子をわかっているからなのか、
「だからさ、気にする事はないわよ。これも全て女心をを分かってない俊が悪いんだから」
愛咲は葵を励ますように、気持ちを吐き出した。
ただ励ますだけでは、きっと効果はなかったのだろう。
しかし、愛咲の本心が含まれた励ましだったからこそ、葵は吹っ切ることが出来たのだろう。
「……ですね!おっぱいにしか頭に無い俊先輩が悪いんです!」
そんな葵が俊に対する愚痴をこぼす傍らで、
「ほんっと……あいつが全部悪い……」
愛咲は葵に聞こえないよう小さく呟いたのだった……。
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