第13話 恋する乙女はやがて炎を灯す
「……分かってはいましたけど、
「そりゃそうでしょ。あいつはどうあってもおっぱい星人よ」
俊への愚痴り合いが終わった私と
当然、俊が大事にする本だけあって内容はとても濃かった。もちろん全部おっぱいなのだけれども、しかし本の形式がバラバラであった。
例えば、まずみんなが第一に思い浮かぶであろうグラビア雑誌やグラビア写真集。これは思ったほど多くなく5冊ほどしか無かった。
これに関してはなんというか、私にとってはかなり意外であった。
男子は皆、グラビア写真を見て興奮しているものだと私は思っており、おっぱいに並々ならぬこだわりを持つ俊も同様だと考えていたからだ。
しかし、葵ちゃんはどうやら私とは違う考えだったようで
「まぁ、思った通りでしたね」
と何か納得した様子。
普段は小さい胸の女の子の写真を見ているであろう葵ちゃんが、今だけとは言え、胸の大きい女性の写真をジーッと眺めているのはなんとも新鮮な光景だった。
どうしてこの子、小さい女の子が性的対象なんだろうか……。
そんなことを考えていると、葵ちゃんは私が普段目にしないような本を手に取った。
「葵ちゃん、それは……?」
綺麗な女の子が表示に描かれた本を指差し、私はその本について葵ちゃんに聞いてみた。
初めこそ、キョトンとした反応をした葵ちゃんだったが、すぐさま理解したのか
「あぁ、櫛名田先輩はこういうの見るのは初めてですか?」
と私に事実確認をしてくれた。
私は葵ちゃんの言うように、綺麗な女の子が表紙に描かれたやや薄めの本を見るのは初めてだった為、
「そうなの。葵ちゃんはこういうの見たことあるの?」
見ていない旨を伝え、ついでに葵ちゃんはどうなのかと質問してみることにした。
その答えはと言うと
「見たことあると言うより、私の家に普通にありますしね、こんな感じのイラスト画集」
葵ちゃん自身も持っていることが分かった。
「へぇ……どんな感じなんだろう……」
葵ちゃんも持っているならと、私は内容が気になり表紙をめくろうと葵ちゃんが手にしている本に左手を伸ばした。
すると
「あっ、そんな堂々と見ない方がいいですよ!?俊先輩のやつなんで恐らく……!」
葵ちゃんが必死になって止めようとする。
しかし時すでに遅く、中身を見た私はとてつもなく後悔することになる。
俊と葵ちゃん、おっぱい星人とロリコン美少女の2人が持っている“ お宝”。この時点で私は警戒すべきだったのだ。
そんな本の表紙をめくると、
「な、な、な……なにこれぇ!ほとんど見えちゃってるじゃない!!!!」
あまりにも過激な絵が私の目に飛び込んできたため、思わず叫んでしまった。
その絵の内容というのは、紫の長い髪で頭にクリスタルのティアラを付けた大人びた胸の整った女性が薄紫のドレスの胸元緩めさせ、あと少しで突起が見えそうな格好をしている、とても高校生が見ていいものじゃないと思うほど、私には刺激の強いものだったのだ。
「やっぱり……」
なんとなく内容の予測ができていたのだろうか、葵ちゃんは大きくため息をついていた。
「いいですか、
真面目なトーンで葵ちゃんは私に話しかける。
その声に反応して、葵ちゃんの顔を見る。
「う、うん。なんか顔つきが真剣ね……」
私が話に入る準備が出来たのを悟ると、葵ちゃんは私に語り始めた。
「真剣にもなりますよ……。こういう画集と言うのはですね、大抵が際どい格好をした可愛い女の子が描かれているものなんです。ですので、もしまだこの画集を読むのしたら相当な覚悟を持ってページをめくってください」
葵ちゃんが語り終わると1つの疑問が生まれた。
それはというと
「……葵ちゃんは平気なの?」
何故さっきの絵を見て特に動揺を見せなかったのか、という事だ。
するとその疑問点はすぐに葵ちゃんの話によって解消されることになった。
「私は漫研や趣味でこれと似たような絵を描いてるので、全然余裕で見れますね。むしろ、プロの絵を隅々まで観察できるので資料としていいんですよ」
そう言って、なぜ平気だったのか説明してくれた。
漫研の部室に色々と女の子の絵があったのはそういったわけだったのか。
「そうなんだ。奥が深いのね……」
私は一人で勝手に感心していた。
「そんな真剣な眼差しで刺激的な絵をマジマジと見つめて、奥が深いって言われましても」
「……なんか目が離せなくて」
俊がイラスト画集というものにハマるのも妙にうなずけた。イケないものを見ているという背徳感が、後味として残るのだ。
……早いところ忘れないと。
すると、葵ちゃんは察しがいいのか
「後はイラスト画集以外ですと妥当に漫画ですね。案の定青年・成人向けの」
別の本の話題へと変えてくれた。
とは言え、ここまで来るともはや呆れるしかなく
「なんというか、よくもまぁこんなに集めたわよね」
と、思わずボヤいてしまった。
ここまで文句をあまり言わずにいた葵ちゃんも、どこか耐えきれなくなったのだろう。小さくこんなことを言っていた。
「……これくらいの興味をほんの少しでも私にも向けてくれたっていいのに」
と。
本来は聞こえちゃいけないのだろうし、反応してはいけないのが普通なのだろう。
しかし、あまりにも予想していなかったことで思わず
「え、葵ちゃん今のって……」
口に出してしまった。
すると、私を咎めることも無く
「あー……聞こえちゃってましたか。そうですよ。私、俊先輩のこと好きですよ」
困り眉で舌をペロッと出して、事実を認める葵ちゃん。
こういった形で告白させたことに申し訳なく思った私は
「ごめんね。別に聞き耳立てるつもりはなかったんだけど」
頭を深々と下げ葵ちゃんに謝った。
すると葵ちゃんから思いもよらぬ返事が彼女の口からつげられた。
「別に構いませんよ。私もさっきの先輩の独り言、聞こえちゃってましたから」
私が葵ちゃんの独り言を聞いてしまったように、彼女もどうやら私の独り言を聞いていたようだった。
「そっか……聞かれちゃってたのか」
私は思ったよりスっとそのことを受け入れた。
もしかしたら、口に出したあの時点から私は誰かにこの思いを打ち明けたかったのだろう。
昔からの思いを……。
「先輩を落とすの、大変だと思いますよ?」
葵ちゃんはイタズラな笑顔で私に言う。
大変だと思う?
それは少し違うと思うわよ、葵ちゃん。
「知ってるわよ。何年俊と付き合いがあると思ってるの。葵ちゃんこそ、覚悟できてるの?」
大変だって知ってても私はずっと俊のことが好きなのよ。
葵ちゃんはどうなのかな?
「覚悟も何も、私に興味を持ってもらいたいから毎日アプローチしてたんです。これからもそれは変わりません」
どうやら、葵ちゃんも私と同じ気持ちのようね。
となれば、葵ちゃんに掛ける言葉はアレしか無かった。
俊と種田くんがやってるかのように、私達も女同士の負けられない戦いをするとしましょう。
「それじゃあ、どっちが先に俊を落とせるか勝負だね」
「望むところです!」
私たちは一斉に声を張り上げ、部屋中に余韻を響かせた。
「「
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