短編 聖なる日の贈り物4


夢のようなクリスマスイブだった…


「タケルくん、ぼんやりしてるね」

「あ、すみません」


今日から冬休み。

朝からバイトに入っていたのに、まだ夢の中にいるような気分。


「ブッシュドノエル、喜んでもらえたみたいだね」


僕の様子から、先生へのクリスマスプレゼントは大成功だったと、トシさんには伝わっているようだ。


「カナコ先輩とトシさんのおかげで、ブッシュドノエル、すごく喜んでもらえて…」


2人の言う通り、頑張って作って良かった。


とはいえ、クリスマスイブは過ぎ去っても、クリスマスの日もケーキ屋は忙しい。

仕事、仕事…




今日の賄いは、カナコ先輩のチャーハン。昼休憩で、休憩室でご飯を食べてると、慌てた様子でトシさんに呼ばれた。


「タケルくん!ちょっと急いでこっちおいで!」


なんだろう?こんなに急がせるなんて、トシさんらしくない。


「え…」


休憩室のドアを開けると、はるか先生がいた。


「バイト中にごめんね、どうしても今日、タケルくんに渡したくて…」


先生が、紙袋を僕に渡してくる。


「昨日のブッシュドノエルのお礼?というか、クリスマスプレゼントかな?

気に入ってくれるといいんだけど…」


厚手の白い紙袋は、いかにもセンスのいいお店で買ってきました、と言わんばかり。


「あの…開けてもいいですか?」

「もちろん!」


紙袋の中に、赤と緑でラッピングされているもの。

丁寧に袋を開けると、グレーの手袋が入っていた。


「タケルくん、あんまりブランドものとか持ってないみたいだし、興味ないのかなぁ、って…機能性重視してみたんだけど…」


「ありがとうございます。嬉しい…」


裏がボアになっていて、あったかそう。

機能性重視というのは、手袋したままスマホが操作できるもの、という意味のようだ。


「気に入ってもらえたみたいで良かった…お店の人に高校生の男子が使える手袋、って相談しながら選んだんだけど、気に入ってもらえるか不安で…」


先生にもらった物が気に入らないなんてあり得ないのに。

僕のことを考えてプレゼントを選んでいる先生の姿を想像するだけで…


ああ…

ブッシュドノエル作ってホントに良かった!!!


「タケルくん、昨日は素敵なクリスマスをありがとう…あんな楽しいクリスマス、何年ぶりかな」


僕は、あんなに幸せなクリスマスは初めてだったと思う。


「来年のクリスマスは、もっと美味しいケーキを作ります」


「ふふ…期待しちゃうよ」


ちょっといたずらっ子のような可愛い笑顔を見せる先生。


「手袋、大切に使います」


なんて特別なクリスマスなんだろう。

クリスマスイブに先生と過ごせた上に、クリスマスにプレゼントまでもらえるなんて。


来年のクリスマスも先生と一緒に過ごせますように


Merry Christmas!


ー聖なる日のプレゼント 完ー


お読みいただきありがとうございました!

実はこの手袋、本編第4部 31話に登場していました。

手袋だけは、大事にベットサイドに置くという(笑)


明日は、他投稿サイトにスター特典として11月にアップしていた短編

「ある休日の過ごし方」をアップします。

初の、あの人目線の短編です。

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