第21話 酒と泪と
「タケルくん…呆れてる?」
今の今まで、すっかり酔っぱらって、寝てしまいそうだった先生の姿だったのに。
急にいつもの先生のような口調に戻り、ドキッとする。
「迷惑かけてごめん」
酔っぱらってたんじゃないの?
「僕のこと、分かってますか?」
「タケルくんでしょ?」
「酔っぱらってたんじゃないんですか」
「酔っぱらってたよ」
先生の目線が、僕からふとテーブルの上に移る。
ああ…喉が渇いてるのか。
僕は腕を伸ばしてテーブルの上のミネラルウォーターを取り、ベッドサイドにそっと置く。
「お酒飲むと、喉が渇くんでしょ?」
「うん」
「酔いが醒めましたか?」
「ううん…まだ酔っぱらってるけど、ちょっとはっきりしてきた」
ベッドサイドに置かれたミネラルウォーターをじっと見つめる先生。
「タケルくんが優しくて…酔っぱらってるからだからね、今だけ」
ふと、先生の目から大粒の涙が零れ落ちる。
「ごめん…恥ずかしいとこ見せて」
僕に涙を見せたくないのだろう。顔を隠すように、お布団を引き上げる。
「恥ずかしくなんてないですよ」
僕は、初めてみた先生の涙にどうしていいか分からなくて
でも、何か少しでも力になりたくて、布団の上から先生の肩を優しく撫でた。
「もう少し、先生の側にいてもいいですか?」
「…」
「嫌だったら、出ていきます」
「ううん…嫌じゃない」
お布団でくぐもった先生の声が聞こえる。
「もう少しいてくれる?」
「先生が眠るまで、こうしてます」
布団ごしに伝わる、先生の肩の揺れが、泣いていることを僕に伝えてくる。
きっと、何かあったんだ…
ただ、ハイテンションでウノしてたわけでも、ただただお酒をたくさん飲んだわけでも、きっと、ない。
僕に言えないような何かがあって、それでこんなに酔っぱらって…
僕には、ただただ、お布団の中で泣いている先生の肩を撫でることしかできなかった。
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