第17話 東京への移動

コンクールの前日に、巨匠、ロンバルディ教授のレッスンが受けられるということで、僕は学校が終わったその足で空港に向かった。


制服は着替えて、学生カバンや靴など、コインロッカーに投げ込む。

今日は飛行機で東京に入って、この前泊まったゲストハウスに移動して…


明日の朝イチの飛行機で移動も考えたけど、レッスン時間が思ったより早くて間に合わない可能性もあったため、金曜夜の移動になった。


楽譜やコンクールの参加票、演奏用のスーツや靴が手元のカバンに入っていることを確認して、コインロッカーを閉める。


先生は、経営する会社の仕事の関係もあって、水曜に既に東京に移動している。

なんと先生との待ち合わせは、ゲストハウスで、僕の分まで先にチェックインしておいてくれる手筈になっていた。


去年の秋に1人で東京に向かった時は、飛行機に乗れるだろうかとか、このペラペラのチケットで大丈夫だろうか、とか色々不安に思ったものだけど、2回目となり少し安心して空港を進む。


預け荷物はなく、全て手持ちで移動できるバッグにした。東京に着いてからも、ピアノスタジオを2時間予約している。

預け荷物がなければタイムロスが少しでも減らせるだろう。


今日は朝から学校で、ピアノに触っていない。明後日が本番なのに、ピアノに触れずにいるのは不安が増大する。しかも、明日は巨匠のレッスン…。


ロンバルディ教授とは、どんな人だろう。

レッスンは厳しいだろうか。


演奏してすぐに、話にならないとレッスンが終わったりしないだろうか…


写真に映る姿はおだやかそうな初老で、演奏する動画を何本も見たけど、実際のレッスンでは分からない。


心配だ…

はるか先生が一緒とは言え、いや、だからというのもある。


先生の前で、あんまりカッコ悪い姿、見せたくないなぁ…


僕の演奏が否定されるということは、はるか先生も否定されることになるんじゃないだろうか。


今回は、大きな不安を抱えたまま東京に向かう。

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