第5話 目まぐるしい生活

『12月の予選曲、バッハのパルティータ3番はどうかな?』


はるか先生からのLINE。

実はまだ予選曲すら決まっていなかった。もう2ヶ月ないんだけど…


『パルティータは1曲通しで弾けるものを持っておいた方が、先々いいと思うの。聴いておいてね』

『分かりました』


返事をして、YouTubeを検索する。

何曲演奏できるだろう。今度のコンクールは課題曲もなければ、時間制限もない。

全曲弾いてもいいんだろうけど、2ヶ月弱となると2曲か3曲…。


アルマンドは得意だから入れるとして、アルマンドの前にファンタジアがあるのか…ああ、これなら弾けるかも。あと…1曲、弾けるとしたらどれだろう。


『英検2級ね。まずはいいんじゃない?』


YouTubeで選曲をしていたら、今後はヨシキさんからLINEが入る。

実は、ヨシキさんにTOEICを勧められていたんだけど、英検を準2級までしか持ってないと言ったら、先に2級をとるのを勧められたんだ。


『コンクールがない1月に1次が受けられそうなので、申し込もうと思ってます』

『いいと思う。2級までとれば、TOEIC600点からの勉強がしやすいから』

『で、プログラミングなんですけど、バイト代もまだそこまで溜まってないし、親にも相談してなくて』

『パソコン持ってるの?』

『はい』

『だったら、無料のやつで数ヶ月勉強してみなよ。やりたいって言っても、合うか分からないよ?』


確かに…。

自分に合わなければ、どんなにやっても伸びないかもしれない。

ヨシキさんがURLを送ってくれた。


『ありがとうございます。やってみます』


英語とプログラミングとバイト、そしてピアノ…


講習会に参加した後、僕の生活は目まぐるしくせわしなくなったように感じる。

でも、なぜかそれは嫌な感じじゃなくて


少しずつ、先生に近づいているような、そんな気さえして楽しくもあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る