第28話 待ち合わせ
翌日の朝、僕は僕を応援してくれる人たちが得た興奮からか、5時に目を覚ました。
もう少し寝ようかと思ったが、妙にスッキリしている。
「そうだ…」
昨日、教えてもらったパン屋、この時間なら買えるかも…。
Tシャツとジャージ姿で、散歩がてら行ってみよう。
ゲストハウスから歩いてすぐのそのパン屋は、この時間だというのに既に列をなしていた。食パンの方はこちら、という列に並ぶ。僕が並ぶとちょうど販売を始めた頃らしく、思ったよりもスムースに買うことができた。
東京土産なんてどんなものが良いのか分からなかったから、これをお土産にしよう。「予約していない人は2つまで」とのことで、自宅とはるか先生のお土産に買い、そのままぐるりと、探索がてら散歩する。
休日の朝。東京の中でも、ちょっと下町風情も残るような雰囲気は、僕がこれまで思っていた東京とはまた違った。マンションももちろん多いけど、昔ながらの家も多く立ち並んでいて、老舗と呼ばれるパン屋はもちろん商店もたくさんある。
これまで東京に来ると、ピアノのホールとデパートとディズニーランドくらいしか行ったことのない僕には驚きだった。
10月に入り、この時間は少し涼しく感じるくらい。一人で東京に来て、ピアノの講習会に参加しゲストハウスで僕の片思いを応援してくれる人達に出会い、超人気らしい老舗のパン屋の食パンを朝5時から買うーーー
面白い体験ができたな
ゲストハウスに戻ると朝食カフェがオープンしていた。応援団の一人、ミヤさんがコーヒーを飲んでいる。
「おはようございます」
「あ、ピアノ男子だ~何?朝から散歩してきたの?」
「はい、ここの朝食の食パンを卸してるところに」
「ああ、老舗の有名なところね」
ワンコインで今日も朝食をオーダーする。
「今日帰るの?」
「はい」
「また来た時には、あのノートに進捗状況書いておいてね。楽しみにしてるから」
たった2泊だけど、このゲストハウスは楽しかった。
今日は圭吾さんが僕を連れていきたいところがあると言われている。
圭吾さんとの待ち合わせは、地下鉄の駅。「11番出口で」と指示されていた。休日らしいラフな服装で現れた圭吾さんは、思っていたより若い印象。
これまで会った時はスーツだったから、すごく年上のように感じてたけど…でも20は年が離れているのか。
「この出口出てすぐなんだ、さぁ、行こう」
僕を連れて行きたいところがある、という情報だけで、一体どこに連れていかれているのか皆目見当がつかなかった。
小さなビルに入って、奥の階段を上がっていく。
少し暗くて怪しげな雰囲気だったけど、3階に上がったところで急に明るい雰囲気の扉が出迎えてくれた。
「コワーキングスペース?」
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