第25話 キャベツの千切り

2日間の講習を終え、少し安堵しながらゲストハウスに向かった。

講習のことを思い出しながら帰っていたら、途中のコンビニで弁当を買う予定をすっかり忘れてしまったことに、ゲストハウスの扉の前で気付く。


また、後で買いにいけばいいか…


扉を開けると、すでに数名が共用スペースでテレビを見ながら夕食を食べていた。


「おかえり~」

昨日ウノをしていた人が、僕に話しかける。

「これからお好み焼きパーティーするよ、材料費一人300円!混ざれば?」

「え?いいんですか?」

「もちろん!ただし料理は手伝ってね」

「はい、荷物置いてきます」


こんなことがあるとは。弁当を買い忘れてラッキーだった。


「ちょっと~これキャベツ足りないんじゃない?」

「紅ショウガ買い忘れてる~~!!」

「包丁どこ~?」


数名がキッチンでにぎやかに料理を始めているようだ。

僕を見て、ハタチくらいの女性が話しかけてくる。


「何ができる?」

「えっと…キャベツ、千切りでよければ」

「まじで!!やった!!ね~この子がキャベツ切ってくれるって!」


「お!料理男子か!」

「良かった、私いつもスライサーだから」

「姉さん、料理カラキシだもんな」

「うるさいな~粉混ぜるから、いいでしょ」


キャベツの千切りくらいで、こんなに喜ばれると思ってなかった。

「何個切ればいいですか?」

「とりあえず、3個ヨロシク!」

「分かりました」


僕は手を洗って、まな板を準備する。

数名が僕に注視しているのが分かった。


トトトトン…


「わ~~~!」

「思ったより千切り!」

「ちゃんとしたお好み焼きにたどり着けそう!!」


僕のキャベツノルマを終わらせるのを見て、ホットプレートのあるテーブルに座る3人の女性が手招きをしてきた。


「お疲れ様〜!あとはここに座ってゆっくりして〜!」

「何飲む?」

大きなペットボトルが数本置かれていた。コーラ、ジンジャエール、オレンジジュース…


「あ、カルピスで」


「ねえ、若いね?大学生じゃないよね?」

「高校1年です」


「えーー!!」


女性3人が声を合わせる。


「若い〜落ち着いてみえたから、もう少し上かと思ってた!」

「ぎゃーー!これぞゲストハウスの醍醐味!若い男の子!!」


この人たち、いくつくらいだろう?

この女性は、はるか先生と同じくらいかな?


「やだっ!そんなジッと見つめないで〜!!」

そんなつもりはなかったが、見つめているように感じさせてしまったようだ。


「あ、すみません…先生と同じくらいの年かなって…」

「え〜、私は今年30歳になるよ」

「そうなんだ、私なんて38歳!アラフォーだよぉ」

「私は真ん中くらい、34歳!」


次々と年齢をカミングアウトする。

どうやら、この3人組は友達ということではく、ここで知り合った人達のようだ。


「先生って、何の先生?」

「ピアノの…」

「君、ピアノ弾くの?」

「はい…」


3人の年上女性が僕をじっと見つめる。


「やだ〜トキメク〜!!ピアノ弾く高校男子!!」

「今晩、このゲストハウスにして良かった〜!」

「あ、そろそろお好み焼き焼けるよ!準備しよ!!」

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