第20話 チェックイン

講習会会場からすぐ近くではあるけど、細い道を入って行ったところに僕が今日泊まるゲストハウスはあった。特に大きな看板も掛けられていなかったため、一回素通りしてしまい、スマホの地図を見直して戻った。


小さな扉を開けると、小さなカウンターにひとり、男性が座っている。


「こんばんは、チェックインですか?」


ん?ちょっと日本語に訛りがある。


「ここにサインして、お金先払い」


日本人ではないようだ。

僕は名前を住所、電話番号を記入して現金を渡す。


「日本語でOK?」

「はい」


ゲストハウスの利用案内ペーパーは数種類の言語のものが用意されているようだ。

僕は日本語で書かれた利用案内を受け取り、男性のドミトリーは2階、洗面所、シャワー、トイレも2階のものを使うよう案内される。

「洗濯乾燥機は1階、あと、共用スペースも1階です。3階は女性専用なので行ったらダメ。共用スペースは夜23時以降は静かにね。で、これがキー。貴重品はドミトリー横のセキュリティボックスに入れてください。保証できないからね」


初めてのゲストハウスだ。やはりホテルとは勝手が異なるみたい。


2階に上がり、僕のベッドの場所を確認し、荷物を横に置く。

「こんちは~」


2つ先のベッドに座っていた人に声を掛けられた。

「スマホ、充電する?ここACがあんまりなくてさ。スマホとタブレットとパソコンで今、俺が占領しちゃってるんだけど」

「あ、大丈夫です。一度出るので」

「そ。今日から?何泊するの?」

「2泊です」

「短期なんだ。分かんないことあったら言って。俺、もう2週間ここにいるから」

「…ありがとうございます。ちょっと出てきますね」

「あいよ~」


初めて会った人にしては、すごく気軽に話しかけてくるな…。


1階に降りて外に出ようとすると、今度はカウンターの男性が「いってらっしゃい」と声をかけてくれる。


ここでは『知らない人』という感覚は、あまりないようだ。

たとえ一晩でも、同じゲストハウスに泊まれば仲間みたいな意識なのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る