第15話 初めての一人旅

アナリーゼ講習会は東京で行われる。そのために、初めての一人旅。

空港まではバスに乗り、一人で飛行機に乗る。

少しの揺れでも、一人だとなんだか心細く感じる。


とりあえず、飛行機にちゃんと乗れてよかった…。


最近話題のLCCに乗るのは初めてだった。

チケットも、スマホのQRコードをかざすだけ。

座席番号もスマホに表示されている。


これまで家族で乗った時には、大きな航空券を渡されて、というイメージがあったから、これで本当に飛行機に乗れるのか?とすごく不安だった。


羽田空港に降りたら、京急に乗って品川駅で乗り換えて…。

東京の路線図は複雑だ。

乗り換え案内のアプリには、3ヶ所のルートが表示されていた。

はるか先生に、乗り換えが楽なのは品川だよ、と教えてもらって、このルートを選ぶ。


先生は大学を卒業するまで東京に住んでいたらしく、路線には詳しい。今でも東京によく行ってるみたいだし…。


こんなところ一つとっても、自分とはるか先生の差を感じる。

オトナだなぁ…。


可愛いと思うところもたくさんあるけど、やっぱりはるか先生はオトナなんだと思う。


遠いなぁ…。


手の大きさも背の高さも、はるか先生を超えたけど、先生に追いつける気配が全くない。



ふと、あの二人の姿が思い出された。


…トシさんも全然追いついてないかも。


15歳の歳の差を超えて結婚したバイト先のオーナー夫婦。

いまだに奥さんを「カナコ先輩」と呼ぶトシさんは、肩に力が入ってなくてすごく自然体だ。


そうか、追いつこうなんて考えてないのかもしれないな、トシさんは。


もしかして、こういうことにこだわっているからこそ、僕は子供なのかもしれない。


あれこれ考えていたら、飛行機は無事羽田に到着した。

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