第14話 アナリーゼ講習前レッスン
今日のレッスンは、田園の2、3、4楽章すべてを聴いてもらうことになっていた。
気付けばアナリーゼ講習会まであと一週間。
どの楽章を公開レッスンで受けられるかは、前日メールで通達されるらしい。
暗譜は必要ないけど、公開レッスンを受けるのにたどたどしい演奏はできない。内容的にある程度は理解しておかないと、昨年と同じくらいのレベルのメンバーが参加した場合、大恥をかくことになる。
「やだ。やればできるじゃない」
僕の演奏を聴いたはるか先生は、予想外にいい反応を見せた。
「構成も勉強してあるし、調性感も出てる。今まで私に頼りっきりだったのは何故?」
「そ…そんなつもりは…」
「タケルくんは甘えん坊だからなぁ。…まぁ、これまで勉強して身につけてきたものが上手に活用できるようになった、と思っておきましょう。数ヶ所気になる部分があるから、時間もないしピックアップして進めるね」
「はい」
甘えん坊と言われて、僕はやっぱり子供扱いなんだなと思いながらも、これまでその曲の構成や調性を調べて研究してこなかった自分を殴りたい気分になった。
先生に教えてもらおう、という甘えが自分の中にあったのは確かだ。
僕が見落としていた調性の動きや、フレージングをテンポよく手直ししていく。
これなら、出発前に修正できそう。
「で、飛行機と宿泊場所は全部予約できてる?」
「はい、ゲストハウスに泊まることにしました」
それに反応した先生は、楽譜を見ていた目線を僕の方に向けた。
「いい選択ね、きっと楽しいわよ。
圭吾が講習会に顔出すって言ってたから、そこで連絡先交換してあげて。どうやらタケルくんを連れて行きたいところがあるらしくてね」
「分かりました」
圭吾さんが僕を連れていきたいってところは一体どこなんだろう。
気になるけど、まずは講習会でしっかり勉強しないと。
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