第13話 カナコ先輩の助言

「合格したんだ!おめでとう!!」

アナリーゼ講習会の録画審査に合格したため、10月の3連休はバイトに来られないことを伝えたら、トシさんが自分のことのように喜んでくれた。


「講習前も練習する時間が必要なら、休んでいいからね、あと帰ってきた直後も。疲れた状態だと学業にも影響するから」

「ありがとうございます」


トシさん、いい人すぎる…

カナコ先輩は、キッチンで材料を混ぜている。

「タケルくんが来ない日は、女子高生のお客さんが減るね~」

「そうそう、最近女子高生のお客さん増えてるんだよね。タケルくん効果かな!」

「関係ないんじゃないですか?」


確かに、高校が近いせいか女子高生がケーキを買いに寄ることはあるけど…。


「いや、明らかに増えているよ。いや~ありがたいね」

「トシくん、鼻の下伸ばすんじゃないよ」

「分かってますよ、カナコ先輩!」


この夫婦って本当に仲がいいなと思う。15歳の歳の差なんて感じない。感じるのは、それぞれの性格の違いだけ。


「東京ではどこに泊まるか決めた?」

「飛行機は取ったんですけど、会場に近いホテルは軒並み高くて…まだ…」


「ゲストハウスは?」

カナコ先輩は、手を休めることなくメレンゲを作り続ける。


「ゲストハウス?」

聞きなれない単語だった。


「ホテルばっかり検索してたんでしょ~?ゲストハウスはドミトリーみたいになってて値段安いことが多いよ。若いんだしお勧めだけどな」

「タケルくん、カナコ先輩は、世界中のゲストハウスを荒らしながら女一人で世界一周してたんだよ」

「荒らしながらって、アタシをなんだと思ってるのよ!」


カナコ先輩、パリで修行してたとは聞いてたけど、世界一周もしてるのか。このアクティブさは若い頃からなんだな…。


「寝る場所は2段ベットとか個室とか色々だけどね。共用スペースで国籍や世代の違う人とも知り合えたりするし、若い人にはお勧め!」


人と話すのは得意ではないけど、最近、圭吾さんやカナコ先輩、トシさんと出会って、世代の違う人と話すことで世界が広がったような気がしていた。

ゲストハウスに目を向けてみるのもいいのかもしれない。


「調べてみます」

「うん、英語を話す練習もできるし」

「英語は…話せないかなぁ…」


英語は、学校のテストと英検を取るために勉強しているだけ。


「上手に話す必要はないよ、ただのコミュニケーションツールなんだから」


日本語でもうまく伝えられないことがあるのに、英語で伝えるなんて僕にできるのだろうか。


「音楽は世界共通なんでしょ?だったら英語も身に着けておいた方がいいかもよ」


…なるほど。

カナコ先輩が言うと、納得してしまう…。

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