第5話 年の差

初日、面接からの流れで仕事をし、バイトが終わり帰宅したのは夜の8時だった。

「タケル、どうだった?」

「うん、いらっしゃいませなんて初めて言った」

「そうよね~カナコさん、どうだった?」


「カナコ先輩?」


お母さんが目を丸くして笑った。


「カナコ先輩って呼ぶことになってるの?おっかし~カナコさん!!」


そうだよな、やっぱりカナコ先輩って呼び方、普通におかしい。


「トシさんが…ダンナさん?その人もカナコ先輩って呼んでるからって」

「あはは…そうなの。トシさん、どんな人だった?」

「う~ん、ちょっと太り気味な優しい人」

「ねぇ、若かった?」

「あ、若いのかな?」

「若く見えなかった?」


それほど若いとは思わなかったけど…。若かったのかな?

お母さんは、僕の様子に少し残念そうな感じ。


「なんで?」

「15歳も年下の男性に猛アプローチされて結婚した、って話聞いてたのよ。それで、トシさんってどんな人なんだろう、ってずっと気になっていたのよね~」


15歳?!

年の差はあるだろうけど、そこまで離れているように見えなかった…

トシさんが老けてるのか、カナコ先輩が若いのか…


「カナコさんって、パリで修行したパティシエらしいのよ。仕事一筋で結婚するなんて思ってなかったって言ってたわよ。だから、そんなカナコさんを射止めたのは、さぞかし…!な男性なんじゃないかって、アレンジメント教室で話題になっててね」


カナコ先輩ってそんな凄い人だったのか。

しかし、あのトシさんにそんなロマンスが…ちょっと想像できないなぁ。お母さんが会ったらちょっとガッカリするかも…。


でも、あれくらいの年齢になったら、15歳差ってあんな感じ?

いや、あの二人は特殊な例かも。カナコ先輩がエネルギー溢れてて、トシさんは横でニコニコしてて、とても自然な…。


僕がはるか先生の横にいても、きっとただの先生と高校生にしか見えないだろう。

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