第2話 母の行動力

翌朝、顔を洗いに洗面所に降りていくと、笑顔のお母さんがいた。


「タケル、バイト先、いいところがあったわよ、ハイ」

「…ケーキ屋さん??」


お母さんに渡されたのは、ケーキ屋のホームページを印刷したもの。


「そのケーキ屋さんのパティシエとフラワーアレンジメント教室で一緒でね。夫婦で経営しているんだけど、売り子がいないってちょっと前に話してらしたのよ。それで連絡とってみたら、まだ探してるんだって」


これって接客なんじゃないか?

僕にケーキが売れるだろうか…


「話してみたら、まず面接に来てくださいって言われたから、早速今日行ってらっしゃい」

「え?今日行くの?」

「何?行かないの?」


「…行く」


お母さんは行動が速い。決めたら即行動。

行ってみて、僕では無理だと思えば、向こうが断ってくるだろう。


「事情をお話したら、とりあえず今日は履歴書はなくても大丈夫だって。11時に約束しちゃったから、準備しなさい。あと、学校には電話しておいたから。職員室にあるバイト許可願いにお店の住所を書けば大丈夫だって」


既に面接時間まで決められ、学校に連絡までされている。

ええと、場所は…高校の近くか。学校帰りに寄れるし、休日も定期券で行けるし、立地はいいな。


「分かってるけど思うけど、学校のジャージとかで面接行かないでよ?あんたレッスンにもジャージで行ってるでしょ。あれってどうなの?ってずっと思ってるんだからね!」


…それには理由があるのだが…


「制服で行くから大丈夫」


僕は早速出かける準備を始めた。

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