第12話 僕のワクワク
ツヨシは全国大会で奨励賞をもらい「金賞が欲しかったのに!」とブツクサ言っていたが、そのあとのディズニーランドですっかり機嫌を取り戻した。
僕はディズニーランドの乗り物に乗っている時も、帰りの飛行機の中でも、あのキラキラした音の世界が頭から離れなかった。
僕も舞台でキラキラした音を出したい。
はるか先生に習えば、あんな音が出せるんだろうか。
空港についてから、自宅までは車での移動だった。
僕と一緒に後ろの席に座ったツヨシは、東京で遊び過ぎたせいか、ぐーすか横で眠っている。
…今だ!今なら言える…!
「…僕、ピアノが弾けるようになりたい」
僕の小さな声を聞いて、助手席に座っているお母さんががばっと振り返った。
「タケル、ピアノが弾きたいの?」
「うん」
「ピアノ、習いましょ!お母さんはもちろん賛成!お父さんもよね」
運転していたお父さんも「もちろん賛成!」と言ってくれた。
「お母さん嬉しい。なんだか涙出てきちゃった。タケルが自分から何かがしたいなんて、これまで言ったことなかったから…」
「タケルは、言いたいことも言わず、心の中にしまってしまうことが多いけど、そういうのをピアノで表現できるようになればいいなって、お父さんは思うよ」
「ひょうげん…」
「タケル、はるか先生、分かる?ツヨシに声をかけてくれた、あの女の先生よ」
もちろんだ。白いスカートがヒラヒラしていた、可愛いあの女の人。
「うん、はるか先生に習いたい」
「分かった、ちょっとお父さん、次のサービスエリアで止まってくれる?涙は止まらないし、はるか先生にメールしたいし、心の整理もしたいのよ」
「はいはい」
僕がピアノを習いたいと言ったことは、どうやらお母さんをえらく感激させたようだった。
はるか先生にピアノを教えてもらって、僕もあんなキラキラした音が出せたらいいな。
僕はこれから起こるであろう出来事に、とてもワクワクしていた。
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