第15話 世界デビュー

ある日、汰央くんからLINEが入った。


「世界デビューしました!」


URLをクリックしたら、Youtubeの「Tao piano」チャンネルだった。

県外の私立中学に進学し、寮生活をしながらピアノを続けてる汰央くんは、はるか先生が超絶可愛がっていた生徒だった。


曲はバルトークのトランシルバニア舞曲で、彼らしい演奏に、個性を伸ばしてくれる先生に出会えたんだな、と感じた。春休みに会った時には、おばあちゃん先生なんて言ってたけど、いい指導者なんだろう。


コメントが早速ついている。友達とか門下生かな?

「Taoやべえ。こんな指って動くもんなのか」


「偶然見つけました。素敵な演奏!チャンネル登録しますね」


最初のは友達だろうけど、早速ファンもついてるみたいだ。やるな。


「Taoくんの演奏が動画でもいいから聴けるなんて嬉しい!新曲も楽しみにしています」


直観ではるか先生だと思った。名前は


『Haruka』


先生、マンマじゃん。ちょっと捻ったアカウント名にすればいいのに。


コメントを書こうと思ったけど、LINEで返事をすることにした。


「いい演奏だね、汰央くんらしい。バルトークがこんなにバリっと弾けると思ってなかった」


すぐに既読になって、


「これからはピアノもYoutubeの時代だよ!タケルくんも始めたら?」


いやーそんな自信はない。汰央くんの演奏はうまいだけじゃなくて、華があるからYoutube受けするかもしれない。


「早速、はるか先生からコメント来てたね」


「え?マジ?見てない!チェックする!!」


そのまま汰央くんとのLINEはストップした。僕は宿題を済ませてしまおうと机に向かって、30分くらいして、ふと「Tao piano」チャンネルを開いた。

コメント欄を見ていくと、友人に宣伝しまくっているのだろう、30くらいコメントが付いていた。


ハートマークがつけられているのは、汰央くんがそのコメントを読んで「ありがとう」の印。チャンネル登録します、と書かれたコメントには、丁寧に「ありがとうございます」と返事が書かれていた。


僕とのLINEが途切れたのは、Youtubeのコメント返しで忙しくなったからだろう。Haruka先生へのコメントにも返答がされていた。


「聴いてくれてありがとう。Harukaさんのために、これからもたくさん演奏をアップします」


汰央くんって、天然?計算??

さすがの僕でも、これは引く…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る