第9話 ずるい僕

幼馴染のほたるから告白されて1週間くらいたっていた。

あの制服の採寸日で会ってから、LINEも来ていなかった。おそらく、ほたるからはLINEしにくかったのかもしれない。


「付き合おうか」


僕は、思い切ってLINEをした。

すぐに既読になり、しばらく10分後くらいに返事がきた。


「付き合おう!」


ほたるらしい、元気な返事。

クスッと笑った。


自分がずるいのは分かっている。ほたるが特別好きなわけじゃない。いい奴なのは分かっているし、人間としては信用しているけど、恋愛対象として見たことはなかった。

だけど、先生への気持ちが鬱々としている状況では、だめだと思った。そのために、ほたると付き合えば、新しい関係を築けば何か変わるかもしれないと期待したのだ。


「入学式、何時に行くか決めた?うちは、7時28分の電車に乗ろうかって親と話しているんだけど」


そういえば、ほたるは入学式も一緒に行こうと言ってたっけ。

少し考えて、親同伴で、付き合い始めます、なんて伝えるのも恥ずかしいなと思った。


「まだ決めてないけど、入学式は校門の前で待ち合わせでOK?」


「りょーかい!」


ほたると高校生活を始めよう。

兄の言う「いわゆる青い春」が始められるかもしれない。

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