第7話 反省

自宅に帰りつき、今日のことをモーレツに反省した。


「サイアクだ…」


先生に触れられただけで反応してしまった。

肩はまだ良かった。ひじの内側というのが、多分良くなかったのだろう。

いわばそこは、親密な間柄でないと触れることがない場所なんじゃないか、と冷静に分析してみた。


たとえば、彼女と腕を組む時に触れる場所だろうし、友達同士では触れることはあまりない気がする。


しかし、先生はもちろん性的な意味ではなく、僕の弾き方が悪かったために、その場所に触れたのだろう。

頭では分かっているし、その部分に振られるのは初めてじゃない。


でも今回のは、思いっきり体が反応してしまった。

多分、触れ方がこれまでと違ったからだ。


子供の頃は、とにかくベタベタ触られまくった。変な意味じゃなくて、姿勢が悪いと背中を持たれたし、肩はもちろん、ひじもグっと握られて音を出すための角度を体で覚えさせられた。


「私、セクハラピアノ講師だから!」


というのが、先生の笑いのツボらしく、あはは、と笑いながら保護者に話す。

「体の使い方って、ホント大事なんですよ。弾き方が悪いと音も響かないし、疲れるしね」


まさに正論だ。


でもでも、今日の触れ方は、ひじの内側を先生の手の平でそっと外側に押すように…


思い出すだけでもヤバイ。


僕の年齢も考えて、セクハラにならない程度になるべく触れないように先生も気を遣ったのかもしれない。

むしろガシッとひじを握り込んで、ブンブン動かしてくれた方が良かった。


今度、レッスンに行く時はジャージだ、ジャージで行こう。あれなら、少し反応しても気付かれないだろうし。そもそも、今日は気付かれなかっただろうか。


「はぁ…」


大きなため息をつきながら、反省した。

レッスンは続けたいし、とにかく気付かれたらアウトだ。自重自重!!


今日はもうレッスンを復習する元気と気力がない。

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