第4話 青い春

高校の合格が決まり、制服の採寸日の案内が来た。3日間の中のどれか1日を選んで連絡するように、とのこと。


「いつ制服の採寸に行く?」


幼馴染のほたるからLINEがきた。

ほたるとは同じ高校に合格していて、腐れ縁はまだまだ続きそうだ。


「3月16日にしようかと思ってる」


春休みは特に予定もないけど、やかましい兄がまだ高校に行ってる期間内にこっそり行きたいし、レッスンが入っていない日だとこの日しかなかった。


「私もその日にする。駅で待ち合わせしよ」


「14時台の電車でどう?」


「14時24分くらいがちょうどいいんじゃない?」


「じゃ、駅で」


さらっとやり取りが終わってスマホを机に置く。

中学の同級生で、同じ高校に進学したのは、あまり話したことのない男子とほたるだけ。高校に入ったら、知らない人の中に混ざることになるから、少し明るくキャラ変しときたいな、と思っている。


ほたるは、根っから明るいキャラで、何かと僕に関わってくる。

でも、幼馴染というだけで、共通点はほとんどない。

僕はちょっと根暗で喋らないピアノ男子。

ほたるは、バレーボール部の部長もするような、みんなのまとめ役という立ち位置だ。


ただ、親身になって相談に乗ってくれたり、コンクールで失敗して凹んだ時も、励ましてくれたりと、いい奴だ。


「ただいまー」


兄の毅が帰ってきた。


「おー、タケル、春休み長くて羨ましいな~」


リビングのソファでゆったり過ごしている僕を横目で見ながら、毅は冷蔵庫に直行。麦茶をうまそうに飲み干す。


「お前だって、去年は長かっただろ」


「まぁな、俺今からデートだから。夕飯いらないって母さんに言っといて」


また祐奈ちゃんか。

高校に入ってできた初彼女に舞い上がってるな。


「おい、シカトすんなよ。伝えとけよ。お前もマスばっかかいてないで、彼女を作って健全な高校生活を送れ」


返事をしなかった僕に、からかうようにたたみかける。

くだらない内容ばっかり話してくる兄に、苛立つ。


「バカかよ」


「お前はピアノばっか弾いて不健全すぎんだよ、青い春は一度きりなんだぜ」


彼女とのデートで舞い上がっているから、苛立つ僕にも腹を立てず、気分上々に家を出て行った。


青い春か…。


もう一度、ソファにごろんと横になり考えた。

汰央くんも、中学進学で寮生活になって、はるか先生を卒業した。

先生とどうにかなりたいなんて、考えもしない。

ただ、先生と作り上げる音楽は僕だけのものだし、先生が情熱をかけてくれる1番の曲は僕の演奏曲であって欲しい。

それだけだ。

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