第6話 瀝青防水
ミズイガハラの街で“ゴブリン”の報告を終えた俺達は、アレクの店で昼食を取ったのち帰路についた。
アイネル達も早く家に戻りたかったのであろうか、復路は往路よりも順調に荷車を引き、2時間少々で牧場まで帰ってこられた。
予定通り日が暮れる前に牧場に戻った俺は、翌日から始める倉庫の防水工事について準備を進め、この日の作業は終了した。
いよいよ明日からは防水工事を始める。現代を生きてきた俺の知識と経験にようやく出番がまわってきたのだ。
そしてこの日も俺は翌日の作業について考えながら眠りについた。ただこの時考えていたのはいままでとは違い、この世界での作業についてであった。
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翌朝になると俺は朝食も食べずに早速工事を開始した。アレク夫妻にやっとお返しをすることができると思うと、いても立ってもいられなかったのだ。
やっとだ。まずは一つ目のお返し、頑張ろう。
俺は先日の山中でテストしたように、まずは火を起こし、充分な火力を準備した。
そして前回よりも大きな鍋に
液状になった
そして屋根の頂点から塗りつけていった。
これを何十回と繰り返し、倉庫の屋根一面に
「カズトくん、お疲れ様。修理の進みはどうだい?」
ちょうどアレクが様子を見にきた。
そして俺は修理が終わったことを報告する。
「アレクさん、ちょうど今終わったところです」
アレクの顔に一瞬驚きの色が見えた。
「カズトくん、本当かい?たった1日で終わっただなんて......」
俺は屋根を指して工事の内容について説明した。
「今回、屋根には
「木材も?」
「はい。
「30年も......」
アレクは驚嘆していた。それもそのはずである。今までは数年おきに1ヶ月以上もかけて行っていた屋根の葺き替えに代わる工事を、たった1日で、しかも30年以上も持たせるというのだから。
「カズトくん、君の話が本当であればこれは革新的な出来事だ。いや、君のことだから本当なんだろうね。本当にすごい!」
アレクは興奮気味に語った。そしてそんなアレクの姿を見て俺は涙を流してしまった。
「カズトくん、どうしたんだい??」
心配そうなアレクの声。
「すみません......。ただただ嬉しくて。誰かに喜んでもらえることがこんなにも嬉しいことだって今まで忘れてました......」
昔の俺は、名も知らぬ誰かの笑顔のためにとモノづくりの職を志した。しかし社会の現実に染まっていくにつれて、その志も失われてしまっていた。
だが俺は今目の前で興奮気味に喜ぶアレクの姿をみて初心に立ち返った。それと同時にこの世界で生きていく目的も見つけた気がした。
もう一度、誰かの笑顔のために頑張ってみたい。俺の知識で誰かを助けたい。そう思い俺は更なる提案を行う。
「母屋や納屋の方もやってみませんか?」
この機会にアレク夫妻の所有する建物全てに手を加えることを。
「いいのかい?」
アレクも乗り気であった。
そしてアレクはこうも続けた。
「可能であれば僕にも
「もちろんです!」
次の日から俺はアレクに
黒い池へ一緒に行き大量の
2人で作業を行ったこともあるがアレクの飲み込みが早かったおかげで、わずか数日の間に全ての建物に
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