3、おっぱいは良いよ


 最初は単なるお遊びだった。


 当時6才かそこらだった俺たちは、大人の真似をしようと言って、布団の中に入ってもぞもぞと身体を動かしていた。


 布団の中は温かくて、身体を引っ付け合うので、汗だくになって楽しんでいた。


 その遊びが小学生、中学生になっても続いた。気がついたら高校生になっても、俺たちはそのセックスごっこをしていた。


 止めようとも言えなかったし、止めようと考えもしなかった。


「はぁ……はぁ……」


 長い時で一時間以上、俺たちは布団の中で身体を寄せ合っている。汗をかいて、息が荒くなっても、終わりが来るまで俺たちはセックスごっこをする。


 俺は手を伸ばし、胸の膨らみに手を置く。柔らかなおっぱいは、ごっこが始まって以降、彼女の身体の成長に比例して大きくなっている。


 ごっこであるためのルールは三つ。


 一、キスをしない。

 二、おっぱいを揉むのは良いが、乳首に触れるのはなし。

 三、下着の中に手を入れるのは当然ノー。


 この三つは暗黙の了解だ。このラインを超えてしまうと、それはもう「ごっこ」ではなくなってしまう


「ふ……う」


 行為の最中は俺たちが会話をすることは、ほとんどない。「あっ」とか「やっ」とか「うん」とか声を上げる以外は、物言わぬ動物と変わらない。


 ただ一心に身体と身体をくっつけあって、互いの素肌を触れ合わせる。春姫は目を閉じ、ジッと俺が身体を動かすのに身をゆだねている。


 たとえ、俺の一部が太ももの辺りに触れようとも、彼女が嫌がることはない。


 ……俺のそれを、春姫は感じているのだろうか。


 分からない。


 春姫が何を考えているのか、俺は分からない。この十年間、続いてきたセックスごっこが、彼女にとって何を意味するのか分からない。


 不思議だ。ただバクバクと鼓動する心臓の音は、あまりに心地良い。


「や」


 カクカクと腰を動かしても、それは単なる空虚だ。繋がっていないし、繋がらない。


 それでも、彼女はまるでそうであるかのように演技する。


「あっ、やっ」


「春……姫」


 もっと触れてみたいと欲望が現れない訳はない。だが、それ以上を超えることは一度もない。


 「ごっこ」を続けるには、距離感を保たなければいけない。


 これは鉄則だ。

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