2、毛布の中で


 毛布の中で密着した俺たちは、ただしばらく黙って抱き合っていた。


 身体を動かすのはいつも俺が先で、ほぼ一方的に春姫の素肌に触る。


 最初は指先から。


 それから徐々に滑るように、二の腕へ。柔らかい脂肪の部分を指でつまむ。脇の方はくすぐったがるので、あまりに触らない。


 ボタンも外さない。


 それも嫌がるからだ。あくまで俺たちがやっていることはセックスごっこでしかない。


「はぁ……はぁ」


 狭い空間で密着していると、空気が薄くなって、徐々に息が荒くなってくる。


 俺は春姫の胸の膨らみに触れる。


 顔を近づけると、シャンプーの香りが、鼻に触れた。


「……ぁ」


 春姫が俺の耳元で声を上げる。


 汗がべっとりと肌にまとわりつく。彼女はそれを気にすることなく、ぴったりと俺に身体を寄せた。


 かすかに動く髪がくすぐったい。


「テッ……ちゃん」


 上気した声で彼女が俺を呼ぶ。


 俺は大勢を変えて、今度は春姫の上にまたがる。


 それから俺は春姫の身体を脱がして……


 ……さらして、


 ……はがして、


 ……と言うことにはならない。


 俺は彼女の服を脱がさない。


 俺たちの身体は決して直接的に繋がることはない。あくまでこれはセックスごっこで、遊びの域を出ることは決してない。


「あっ、やっ」


 どれだけあえごうが、心のうちで興奮してようが、一線を超えることは決してないからだ。


「……んっ」


 ただ身体を寄せ合い、触れ合い、セックスの真似事をする。それが毎週水曜日、俺たちが決めた遊び方だ。


「や」


 狭い毛布の中で、互いの身体の動きが激しくなっていく。彼女の体温が熱くなっていく。


 俺たちはこの十年間、ずっとこのセックスごっこを続けている。

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