1HIT「好きな人は居ないの?」
テレビ画面では大きくシホがキスしているシーンが流れ出していた。
「やったぁぁぁぁ! 全キャラコンプリートだぁぁぁぁ!」
思わずガッツポーズを決めているのは
「本当に良いシーンだった……」
そう、思い返せば良いシーンだった。テンプレの図書室から始まったと思えば、恋人の作り方を知りたがっているお嬢様だったなんて……。
最初は少し癖があったがこうして恋人になれるなんて最高だったな……。
他のヒロイン達も可愛くってどのストーリーも最高だったが個人的にはこのシホと恋人になれたことがめちゃくちゃ嬉しい。
「やっぱり二次元の女の子と付き合うのは最高だな」
するとスマホの方から電話が鳴り響いた。
「ん……。あぁアイツか」
その電話が誰なのかはわかった。
するとすぐに電話が切られた。
俺はポチポチとボタンを連打しながら画面のセリフを音読する。
アパートの施錠されてるはずのドアが、ガチャッっと、なり響き。ドアが勢いよく開いた。
「達也! ご飯作ったから食べに来いってLINEしたでしょうが!」
金髪の少女が物凄い
家が隣で同士ということもあって、なんとなく過ごしていたのだが高校も同じに通い。隣の部屋の住人でもあるお世話してくる同世代の幼馴染だ。
「三月。なんで俺の部屋の鍵を持ってるんだ?」
「あんたの両親に頼まれてるからに決まってるじゃない。あんたのお世話を頼むから部屋の鍵も預かってるし」
「全く、部屋も隣ってさ……。お袋とか親父の悪意ある過ぎるだろ。俺の領域であるセーフゾーンをぶち壊しにかかってくるんだから……」
俺がコイツのことを嫌いな理由はプライベート空間がないことだ。
お風呂上がりで裸のまま下着を取りに行ってたら、三月が部屋を開けて素っ裸を見られたっていう。高校一年の頃に嫌な思い出であった。
「本当に裸を見られて最悪だったな……」
ため息を吐いていた。
「早く私の部屋に来なって。ご飯作ってあげたんだから」
幼馴染の方を構っていたらテレビの方から曲が流れていた。
やばい今、三月のところに行ったらシホちゃんとデートした日々の映像を見逃してしまう!
……カップ麺があるからそれで良いや。
「三月だけ食べてていいぞ。俺にはカップ麺という人類の宝物があるからな」
「良くないって毎日言ってるでしょ! 冷めちゃうから達也も来るの!」
後ろから殺気みたいのが溢れ出しているが気にしない。せっかくの挿入歌を聞き逃してはなるものか。
「へいへい」
俺のところまで近づき、手を掴み出してきた。
「ほら、一緒に食べるよバカ達也!」
「なぁ! 待ってくれ、シホエンディングが見れてないんだぞ! このあと大事なイベントシーンが見れなかったらどうするんだ!」
「後ででも見れるでしょ! 良いから達也の分まで作ったんだから。早く食べるの!」
そして三月は俺の服の襟元をグイッ! っと掴み引っ張るもんだから息が出来ないいまま引きずられていった。
「ぐへっ‼ く、首! 首! 息が出来ねぇ……」
そのまま三月の部屋に連行されて、放してくれた。
この理不尽極まりない暴力モンスターには困ったもんだ。
プライベートの問題は三月から鍵を奪えばいいが……。
いつも毎日、三月には暴力を受けてる。これだからリアルは……。ホント、昔の方が良かったぞ。
「……俺の恋路を邪魔するなんて、世も末だな」
「それってどうゆうこと?」
三月がムッ少し睨みつけるような顔をしていた。
「だってこんな暴力的でシホちゃんとのデートすら邪魔するって事だよ。三月はホントわかってないよな男心が」
すると三月のこめかみが出来ていて怒り状態になっていた。
「ちょっと待ってな……。堅いもの持ってきて達也の脳天かち割ってやるから」
立ち上がってた。それで椅子から離れようとしている。
ヤバイ殺される……。
俺は椅子から素早く降りて土下座のスタンバイをする。
身につけた殿下の宝刀。十八番になっている土下座を素早くスタンバイする。
「すいません……さっきのは撤回するので許して下さい」
「……じゃあ質問を答えてくれる」
「質問? 何を?」
「えっと……。私ら高校2年生になったじゃない」
「あぁ、そうだなもう、高2だな。今年は一緒のクラスだな」
今年の春から三月とは同じクラスということだ。
「……そうだね。今年は一緒のクラスで楽しくなるかもね。私がそばに居た方が達也もなにかといた方が良いかなって」
去年は違うクラスだから三月がどんな人と一緒に仲良くしてたのかは知らない。
まあ、三月には言ってないけど。顔見知りが居なかったのは寂しかったことだ。
「……そうだな。三月といた方が何かと助かる」
「にしし」
ニヤッと笑っていた。
たく、こいつの場合はすぐに調子に乗ってミスをやらすから気をつけないと……。
「まったく」
……その笑顔だからズルいと気がする。
幼馴染だからなのか。なんか許してしまいそうだった。
三月がため息を吐いていた。
「達也。遠目から見たらモテさそうなのに恋人とか。……出作らないの?」
「恋人ねぇ」
現実の恋愛は正直わからん。
「いうか三月こそ。俺なんか構ってないで恋愛したら良いんじゃないか?」
まあ、幼馴染とはいえ三月も女子なんだし好きな人とかいるかも知れないしな。
すると急に顔が真っ赤になっていた。
「わ、私は良いの‼︎ あんたの将来の方が心配なんだら……。それで達也は好きな人居ないの? 同じクラスとか……。その……気になる人とか」
気になる人か……。リアルでは居ないが二次元になら当然いる。
「そう、俺にはシホちゃんという可愛い彼女が居るんだ。本当にベタな展開だけどだ。心から喜びが生まれて一緒に過ごした日々は忘れられない! また、水族館で彼女の笑顔を見るんだ! もう一周。記憶を無くしてからやろう……」
「……へぇ」
「シホちゃんと愛は永遠!」
「……」
ペシッ!
また教科書で叩かれた。
「待て! なんで殴るんだ!」
「記憶を無くしたいって言ってたら実行に移さないとでしょ」
「しなくていいから! 例えばだよ。まあもう一回シホちゃんとのデートはするけどな。今夜は徹夜フィーバーだぜ!」
夜中までやろう。今からやれば朝を超えるかもしれないが。
「……」
ペシ!
また教科書で叩かれた。
「全く……。そういった二次元じゃなくって、現実には居ないのって話し」
「なに三月。シホちゃんと俺の愛を引き裂くつもりか……」
「はぁ……。あんたそればっかりだよね。昔は私のこと三月お姉ちゃん大好き! って、抱きついてくれて頭。撫でで嬉しそうにした弟みたいなが、こんなになってしまうなんてね」
「そんな昔話! やめろおぉ!」
確かに昔は三月とずっとくっついて歩いてたから兄妹みたいな感じがあったけど。それとこれとは昔の話だ。
「三月に対して変なことしてないだろ!」
「してたわよ」
三月がニヤッと笑っていた。
「達也には小5の時に私のパンツを枕にされてヨダレまみれのベタベタにされたのは今にいい思い出よね」
「やめろぉぉぉ!」
黒歴史を掘り起こすな!
昔に三月の部屋で寝てたら下着がその場にあって当時は分からなかった。と、いうか昔の俺よ
「んで、私のお気に入りだったパンツをダメにした罪として。どうなの? 好きな人は居ないの?」
「リアルには居ないっての! 俺はリアルより二次元のシホちゃんみたいな巨乳で抱きしめるのが夢なんだ!」
そう、絵に描かれたあの村田胸で抱きしめてくれたら物凄く嬉しい! リアルでやったことはないけど……。
「へぇ……巨乳ね」
「じゃあお姉ちゃんの胸はどうなの? ほれほれ」
三月が自分の胸を寄せてきてからかってきた。
全く三次元のなにが良いんだか……。
「その貧乳に言われても困る。同じ貧乳の胸なら二次元の方がマシだし」
「……ほぉ」
三月が席から立ち上がりこっちに近づいてきた。
「そもそも小学生時代から全く変わってない胸を見てもそんなになぁ……。ぺちゃパ––––」
ガシッ!
「さっきまな板って言ったわよね」
「そこまでは言ってないです……」
メキッ!
ちょっと待ってメキッて響いたぞ! メキッて!
「は、離せ! バイオレンスモンスター!」
「誰がモンスターじゃあ!」
三月が拳を構えそのまま俺の溝内に放たれた。
「ぐはっ!」
そのまま地面に倒れ込む。
「次は貧乳って言ったらタダじゃおかないから。それに寄せればDカップぐらいあるわよ! 達也のアホ! さっさと食べちゃって!」
「へいへい……」
急いで食べて自分の部屋に戻った。
「好きな人ね……」
三月がこんなにも好きな人の話とか聞いてくるから少しビックリしている。
「……あいつとはただの幼馴染だ」
小さい頃、抱きついてきてその温もりというか安心感があった。そんな気持ちが今にでも残っている。
高校に入ってクラスは違うが、こうして毎日料理を作ってはご馳走を振る舞ってくるから。三月に対してそういった感情があるかなんて分からん。
「……あいつに恋人か」
そんな風に自身に聞くと、三月が誰かとデートしてたり、手を繋いでいるのが頭の中で過って嫌な気持ちがあった。
「……っ! なんでこんな気持ちがあるんだよ! あいつが幸せになるんだったらいいことだ」
そう、三月が誰かとデートして幸せになってくれるんだったら、嬉しいはずだ。俺は三月に対して姉みたいな存在なんだから……。
「三月ねぇ。今ってフリーだったりするんかな」
……っ! な、何を言ってんだよ俺は、俺は二次元を愛してるんだって言うのにリアルの気持ちが理解出来るかなんてはっきり言って無理だ。
「……リアルは本当に分からん」
そう、リアルの気持ちは分からん。それで良い。今は三月の幼馴染なんだから。
「……続きしよ」
俺は風呂に入ってゲームの続きを始めた。
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