第2話 初陣②

「この先にヨドゥンがいるのか……」


この扉が開いた瞬間、そこから戦いが始まる。その事実にエイジはごくりと唾を飲む。


しかし彼らの服装は戦士というにはあまりにも軽装すぎた。

カケルは緑色の上下トレーニングウェア、エイジはストライプの黒シャツにブラウンのパンツとカジュアル過ぎる格好だ。それに加えて武器らしいものもない。

なぜか?

それは彼らの右手首についた腕輪に秘密がある。


「エッダを展開、モードE」


カケルが腕輪に触れると、腕輪がパズルのピースのように分解され、金属質の鱗のようなものがカケルの右半身を覆う。胸当て、腕と脚へのアーマー、そして身の丈以上の長さの槍が形成されていく。


「エッダ、モードB」


エイジが触れると、カケル同様に右半身を覆うアーマーとこちらは身の丈以上の二連装砲身が形成される。


エッダと呼ばれるこの腕輪はグラスヘイムの戦闘員が所持する変形型武装である。モードEとはEdge――刃型の近距離武装形態をとり、モードBはBullet――銃型の遠距離武装形態をとる。



『エッダによる武装を確認、ゲート開門』


電子音声が流れ、重い扉が開かれていく。

深い霧に覆われた世界の中に大きな影が見え隠れする。


「いくぜエイジ!」

「あぁ!」


外へと駆け出した二人が踏みしめたのは、かつて森と呼ばれた場所だ。しかし今では倒木と砂利にまみれており、動物といえるものも存在しない。


「グルルルアァァ!」


ただひとつ、目の前のヨドゥンという存在を除いては。


兎のような長い耳と顔には似合わない三メートルはあろう熊のような体。バニスと呼ばれる獣型の下級ヨドゥンだ。


「援護射撃、たのむぜ!」


カケルは槍型エッダを前に構え、突撃する。


迎え撃つようにバニスが巨大な腕をカケルの体に振り下ろす。

身の丈以上の武器をもつカケルは、見た目よりも軽やかに跳躍し、襲い来る腕をかわす。


「そりゃあ!」


間合いに入り、振るわれた槍でバニスの体を斬りつけたカケルは走り出す。


「いいのか?俺に気をとられて」


その動きを追ったバニスに向けて不適に笑うカケル。その体には何発もの銃弾が撃ち込まれた。


「グッ……!」


倒れこむバニス。

エイジの銃型エッダからは硝煙が立ち込めていた。


「よっしゃ一体目!うまく俺の方追ってくれたな!」

「カケルは目立つからな、良くも悪くも」

「……なんだよそれ!」


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