第5話 不本意ながら模擬戦で死にそうです

 「あら、あなたたちもう面識があったの?」


 アリーシャ先生と一緒に訓練場に来たジーナが言葉を無くしたまま見つめ合う俺と先生を見て訝しげに言う。


 「え、いえ、その……」


 どう答えたものかと動揺した俺は、目の前のアリーシャ先生の目を見て思わずひっ!と悲鳴を上げた。怒りに燃えるその眼には『余計なことを言ったら殺す』とはっきり書かれている。既に全身からは真っ赤な光が炎のように勢いよく立ち上っているのが見えた。


 「やあ、初めまして。私はここの実技教官、アリーシャ・グラノアだ。見ての通りダークエルフでね、外見は幼く見えるかもしれんが、少なくとも君の数十倍は生きている。舐めない方がいいぞ」


 怒りを押し殺した声で笑みを浮かべながらアリーシャ先生が言う。激怒しているのが丸見えなので、その笑顔が恐怖を倍増させる。


 「な、舐めるなんてとんでもない。ははは……」


 「そうかね?ちなみに私たちエルフ族は貴様ら人間と違って地水火風全ての精霊魔法を使役するものがほとんどでね。無論私もそうだ。その上私は光魔法と闇魔法もたしなんでいる。君には特別にそれらを全て見せてあげよう。実戦でな」


 「お、お構いなく……」


 「遠慮するな。君も自分の魔法を知らなければならん。本気でかかってきたまえ」


 「あ、あの、アリーシャ先生?これはいつもの模擬戦ですから……」


 「わかっているさ、ジーナ。いつもやっている転生者向けの実地訓練だよ。……ただ今日はちょっと調子が悪くてな~。上手く魔力がコントロール出来ないような気がする。まあ。ふ、ふふふ……」


 怖い怖い怖い!る気だよ!完全にる気だ。フラグはフラグでも立ったのはどうやら死亡フラグだったようだ。すまん、リリア。もう生きては会えんかもしれん。


 「やりすぎちゃダメですよ。忘れたんですか?転生者の方を万が一死なせるようなことがあったら……」


 「こいつはまだ<スキル>が顕現してないんだろう?なら問題ないさ。訓練に事故は付きものじゃないか。なあ、ジーナ」


 問題あります!<スキル>の前兆がもう起こってます!ああ、こんなことならやっぱり正直に申告しとくんだった。


 「ふふ、そう怖い顔するな、ネリー。冗談だよ。それくらいの覚悟を持って臨まないと魔法が発動しないだろう、こいつも」


 いーや、本気だ!この目は殺人者の目だ!ああ、<スキル>が発動してるって言っちゃおうかな。しかし感情の色が見えます、と言ってもやっぱりその程度なら問題ないとか言い出しそうだぞ、このダークエルフ。 


「え、ええと、それでは始めます。トーマさん、意識を集中して魔力を操るイメージをして下さい」


 ぐわ――っ、逃げてぇっ!しかしダークエルフの教官がおいそれと逃がしてくれるわけがないだろう。何とか相手の魔法を躱して自分の魔法を発動させねば。ある程度の魔法を見せれば模擬戦も終わらせてもらえるだろう。それまで生き残れるかどうか……。

 俺とアリーシャ先生は訓練場の中央辺りまで歩き、スタートの合図を待つことになった。並んで歩くアリーシャ先生の顔は今は落ち着いて見えるが、体から立ち上る光はさらに激しさを増している。


 「ああ、ちなみにな」


 ビビりながら歩く俺にアリーシャ先生が、ジーナとネリーに聞こえないくらいの声で囁く。


 「我らにとって伴侶以外の異性に肌を見られることは最大級の屈辱なのだ。その意味をたっぷり教えてやろう」


 あ、死んだ。


 「ではいくぞ!構えるがいい!!」


 少し距離を取って対峙したアリーシャ先生、ああ、もう面倒なので以後はアリーシャと呼ぶ。(無論本人には言えないが)アリーシャが腰のショートソードを抜き、何かを呟く。すると鋭い刀身が炎に包まれ、そのまま突っ込んでくる。こっちは丸腰なのにいきなり武器に付与魔法とかありえないだろ!それにスタートの合図まだだよね!?


 「はああっ!!」


 そのまま振りかざした炎の剣を俺に向かって振り下ろす。必死に避けるが、腹のあたりに鋭い痛みと熱さを感じた。危ねーっ!寸止めとか峰打ちとかそういう気持ちが全くないガチの斬撃だ。本気で殺す気か!


 「よく避けた。そうでなくては訓練の意味がない」


 いや、これもう訓練じゃなくて公開処刑ですよね?


 「どうした?早く魔法を発動させろ。さもないとこのまま嬲り殺しだぞ」


 発動させても殺されそうな気がしてならないが、とにかく僅かでも助かる可能性を生むためにはそうせざる負えない。俺はアリーシャから目を離さぬまま自分の中の魔力を感知しようと意識を高める。すると、


 「……これは」


 体の中で誰かが囁いたような気がした。同時に頭の中に言葉が浮かび上がってくる。


 「発動させぬなら死あるのみ!炎獄爆竜破ドラグ・フレイム!!」


 アリーシャのショートソードから纏っていた炎が一直線に飛び出し、俺に向かってくる。同時に俺は頭に浮かんだ言葉を叫び、右手を前に差し出す。


 「渦巻く水刃ボルテックス・エッジ!」


 叫びとともに俺の体の前に激しく渦巻く水の竜巻が出現し、飛んできた炎を寸前で弾き飛ばす。しかし炎の勢いが凄まじく、全ての衝撃は受け止めきれない。俺は後ろに倒れこみながらなんとか体勢を立て直した。


 「ほう、弾いたか。お前は水属性なのだな。なら火魔法は相性が悪いか」


 アリーシャはショートソードを収め、地面に片手を付く。


 「ならばこれはどうだ?地烈轟断ガイア・ブレイク!!」


 アリーシャが手を付いた所から地面が裂け、その裂け目がこちらにまっすぐ伸びてくる。おお、アニメでよく見るやつだ!などと言ってる場合ではない。俺は横に飛んでその裂け目を躱す。


 「なっ!?」


 なんと俺がいた場所で裂け目が一旦止まり、それから横にいる俺の方へ向けて垂直に向きを変えてきた。ホーミング機能!?そんなんありか?


 「くっ!」


 横に飛んだばかりで体のバランスがうまく取れず、次のジャンプが出来ない。裂け目はもう目の前まで来ている。


 「穿つ氷槍アイシクル・ランス!!」


 咄嗟にまた頭に浮かんだ言葉を叫ぶ。と、鋭い氷の槍が胸のあたりから地面に向かって伸び、突き刺さる。おれはそれを握って足を宙に浮かした。槍を支点に体を回転させ、何とか裂け目を避ける。裂け目はそれ以上方向を変えず、少し行ってから停止する。


 「なかなかやるではないか。褒美に水魔法の使い方をみせてやろう。渦巻く水刃ボルテックス・エッジ!!」


 俺と同じ魔法をアリーシャが唱え、水の竜巻が現れる。


 「これの本来の使い方はこうだ!」


 アリーシャが手をかざすと、高速回転した水の竜巻から幾つもの水滴が弾かれるように飛んでくる。咄嗟に両腕でかばうが、体のあちこちが切られ、鋭い痛みが走る。文字通り水の刃だ。


 「威力は大したことないが、これだけの数の水刃を避けるのは困難だろう?徐々に相手の体力を奪いたいときには有効な魔法だ」


 そんな場面には遭遇したくない。大体日常で攻撃魔法使うのは禁止なんだろ?


 「次は風魔法だ。約束通り全ての精霊魔法を見せてやれるな」


 お構いなく、と言ったつもりだが。


 「死ねいっ!暴風狂殺陣マッド・ストーム!!」


 とうとう死ねって言っちゃったよ、この人!!


 アリーシャの体の周囲から幾筋もの細い竜巻のような風が水平に飛んでくる。さながら風のドリルといった感じである。さっきの渦巻く水刃ボルテックス・エッジでは防ぎきれそうにない数だ。これは死んだな……。


 ドクン!


 その時心臓が大きく跳ねあがり、体の奥、さっきよりもさらに深い魂の奥底ともいうべきところから何かが囁きかける。体中に今まで感じたことのない力が駆け巡り、一つの言葉が自然に口から零れる。


 「反風魔アンチ……滅業ウィンド


 その瞬間、大量の水が霧状になって吹き出し、俺の体の周囲を覆った。アリーシャの姿も霞むほどの濃い霧に壁に、風のドリルが突き刺さる。


 「ふっ、そのような目眩ましで……何っ!?」


 霧に触れたアリーシャの魔法の風が吸い込まれるように消えていく。霧が晴れるころには全ての竜巻が消え失せていた。


 「……馬鹿な。何をした貴様!初心者の水魔法ごときで私の暴風狂殺陣マッド・ストームが防げるはずが……」


 呆然と呟くアリーシャだが、俺にだって何がどうなったのかわからない。ていうか本当に手加減なしだったのかよ。勘弁してくれ。


 「激流砲射ラピッド・キャノン!」


 ともかく一命はとりとめたのだ。このチャンスを逃がす手はない。俺は再び頭に浮かんだ言葉を叫ぶ。今度は大量の水が勢いよく迸り、アリーシャの視界を塞ぐ。その間に俺はネリーとジーナがいる方へ走り出した。二人の近くならアリーシャもさっきのような危険な魔法は使いづらいだろう。


 「姑息な真似を。……そういえば貴様には全ての魔法を見せると約束したのだったな。まだ見せていないものがあったわ」


 アリーシャが再びショートソードを抜き、何かを呟く。すると見る見るうちにその刀身が漆黒に染まっていく。


 「後は光魔法と闇魔法だが、私は闇魔法の方が得意なのでな。自慢の剣技と共に披露してやろう。光魔法を見せる機会はないかもしれんが、勘弁してくれ」


 要約すると、次の技で殺すよ、ということですね?


 「最初は文句を言ってましたけど、アリーシャ先生いつにも増してやる気ですね」


 「ええ。何か気合が違うというか……」


 後ろでネリーとジーナが呑気にそんな会話をしている。気合じゃねーよ、殺気だよ!やる気満々ならぬる気満々なんだよ!ていうかいい加減気付け!お前らも天然キャラか!?


 「では行くぞ。幻影漆黒刃ファントム・キラー!!」


 アリーシャの体がゆらりと動いたと思った次の瞬間、その姿が視界から消える。はっとして辺りを見渡すがどこにもその影すら見つけることが出来なかった。


 「どこに……はっ!」


 強烈な殺気を感じて空を見上げると、いつの間にか目の前にアリーシャの姿があった。今度はショートソードを振りかざすのではなく、刀身を下に向けて握っている。確実に上から突き刺すつもりだ。


 「っ!」


 魔法を詠唱する暇もない。今度こそ死んだと思ったその時、またも不思議なことが起こった。落ちてくるアリーシャの動きがゆっくりに見えたのだ。事故に遭ったり高いところから飛び降りた時はアドレナリンが大量に分泌されて一瞬が何秒にも感じられるという話を聞いたことがあるが、それと同じことが起こっているのか。しかしなぜか自分の体はいつものように動けるという自覚がある。これならもしかすると……


 「堅牢氷壁アイス・ウォール!」


 やはり詠唱できた。ギリギリのところで俺の体の前に氷の壁が地中から伸びあがってくる。


 「何っ!?」


 ガキッ!と音を立てて漆黒の短剣が氷の壁に突き刺さる。罅が走ったが、なんとか刃を受けきることが出来た。


 「へえ。アリーシャ先生のショートソードを受け止めるなんてなかなかね」


 「ええ。魔力の錬成がよく出来ているようですね」


 大概にしろよお前ら。今殺されかけたの見てただろ!


 「一度ならず二度までも……。貴様一体何をしている!?まさか貴様の<スキル>か!」


 その言葉に俺はドキリとする。<スキル>?そうなのだろうか。確かにさっきといい今といい普通の水魔法を発動したときとは違う感覚があったが……。


 「アリーシャ先生どうしたんです?<スキル>が何か!?」


 「こっちの話だ。井戸端会議でも続けていろ」


 いや、きちんと止めてくださいよ。もう十分でしょう。結構魔法出したし……


 「どうやら貴様は私に辱めを与えたというだけでなく、危険分子としても処分せねばならんようだ。せめてもの手向けに約束通り最後に光魔法を見せてやる。はあっ!」


 アリーシャが両手を天に掲げ、呪文を詠唱する。


 「慈しみと寛容の名において聖なる神に願わん。罪人に施しの雨を、愚かなる者にやすらぎの風を」


 「な、何してるんですアリーシャ先生!その魔法を支部長の許可なく発動することは……!」

 

 ジーナが初めて焦った声を出す。そんなにヤバいのか、この魔法!?


 「聖なる癒しの光サーナーティオ!」


 叫び声と共にアリーシャの掲げた両腕の間に巨大な光の球が現れ、そこから降り注ぐ光が俺を照らし出す。


 『聞こえるか、トーマ』


 「え?」


 突然頭の中にアリーシャの声が聞こえ、俺は困惑する。


 『私は今お前の頭に直接語りかけている。私の力でも長い時間は持たんから簡潔に言おう。この魔法は本来は回復魔法でな。エルフにしか扱えん特別な上級魔法だ。適度に使えば瀕死の重傷者も回復させられるが、過度に付与すれば肉体の急激な老化をもたらす。これをお前の老化限界ぎりぎりのところまで照射すれば、お前はそれからほどなく死ぬ。死因は老衰になるから、死後<スキル>が暴走する心配もない。これは監督署の中でもごくごく一部の上級職員しか知らぬことだ』


 そんな裏ワザがあったとは。本当に危険な転生者が現れた時、買収なんて手が有効なのか疑問だったのだが、監督署のトップの間では解決策が用意されていたということか。っていうか、俺そんな危険な能力持ってないと思うんですけど!?


 『例えそうであっても私に辱めを与えたというだけで万死に値するとは思わんか?』


 思うかーっ!!確かにいいもん見させてもらったけど、って違う!あれは事故だ。大体シャワー室に入ってるならちゃんとプレートを「使用中」にしておけよ!俺が一方的に悪いと言われるのは納得できん!


 『問答無用!もう限界だから話は終わりだ。せめて安らかに死ねい!』


 回復魔法というだけあって、さっき渦巻く水刃ボルテックス・エッジの刃で傷ついた部分がみるみる治っていく。体力も戻ってきた感じだ。この辺りで止めていただきたいんですけど。


 「アリーシャ先生!それ以上は!」


 ネリーが叫ぶ。ああ、転生して二日目で老衰で死ぬのか。どっちの世界でも短い人生だったな。


 「偉大なる神の息吹スピーリトゥス!!」


 その時どこからか凛とした声が響き、さあっとさわやかな風が体を拭きぬけた。と、アリーシャの腕の間にあった光球が消え、降り注ぐ光が止まる。


 「何!?……げっ!!」

 

 声のした方向を見たアリーシャがそれまで見せたことのない焦りの表情を浮かべる。体から出ていた光も赤から濃い紫へと急激に変化していく。


 「何をしているのかしら、アリーシャ?私の許可なく特級魔法を詠唱し、あまつさえ転生してきたばかりの若者に危害を加えるとは、いくらあなたでも見過ごすわけにはいきませんよ」

 

 アリーシャの視線の先を追った俺は、一瞬そこにあるものが理解できなくて思考が停止した。そこには見た感じ10歳くらいの少女がいた。いや幼女というべきか?ネリーよりもさらに輝く、見たこともないような美しい金髪ブロンドが膝のあたりまで伸び、純白の裾が広がったワンピースを身に着けている。特徴的な長い耳がエルフであることを物語っているが、何より目を引くのがその足元だ。先端が緩やかに尖った円盤状の物体に彼女は乗っていた。例えるなら巨大な独楽といった感じだ。それが音もなくふよふよと宙に浮いている。地面から数十cmのところに尖った先端があるのだ。それで背の小さい彼女が大人と同じくらいの目線になっている。


 「し、支部長!」


 ネリーが驚きの声を上げる。え?し、支部長??


 「やあ、大丈夫かい、君。部下が失礼をしたね。私はこの転生者監督署アレック支部の長を務めさせてもらっている、フェルム・インス・アークバルトだ。よろしく」


 フェルムと名乗った少女(見た目はそうとしか言いようがない)は、俺の顔を覗きこむようにしてそう言った。声自体は見た目相応の甲高いものなのだが、その響きにはやはり凛としたものがある。


 「あ、は、初めまして。トーマ・クリーナです」


 「うん。体に問題はないようだね、よかった。悪いが少し待っててくれたまえ」


 フェルム支部長はそう言うと巨大な独楽もどきに乗ったまま、ふよふよとアリーシャの前に移動する。


 「さて。納得できる説明をしてくれるんだろうね、アリーシャ。私を本気で怒らせたくはないだろう?」


 「あ、あはは……やだなあ支部長。何を怒ってるんですか?確かに無断で『聖なる癒しの光サーナーティオ』を詠唱したのは申し訳なかったですが、急を要すると思ったので。その……トーマ君が訓練で怪我をしたので」


 「特級魔法を要するほどの怪我を?それは教官たるあなたの責任ではないかね?」


 「そ、そうですね~。ちょーっとやりすぎちゃったかなー……なーんて」


 「そんな説明で私の目を欺けるかどうか、あなたが一番よく知っているはずですね、アリーシャ」


 「え、まさか……ちょ、ちょっと待って」


 「ふふふ、じゃーん!『真実の瞳フリスズキャルブ』-っ!!」


 「へ?」


 それまでの荘厳な雰囲気から一変して、フェルム支部長が子供っぽい声でどこからともなくステッキのようなものを取り出す。先端近くの両側に羽のような飾りがあり、先端には一つ目のオブジェがついている。どこからかチャララチャッチャッチャーン♪というBGMが聞こえてきそうだ。ドラ○もんか、おい!


 「し、支部長、あのですね……」


 慌てて支部長の腕を押さえるアリーシャ。そんな危険なアイテムなのか?あれ。


 「もう遅いよ。真実の瞳フリスズキャルブは稼働している。……ふむ、なるほど」


 何がなるほどなのか分からないが、支部長は一人でそう言って頷き、俺の方をちらりと見やる。彼女はもう元の雰囲気に戻っていた。歳も含めて読めない御仁だ。


 「ネリー、ジーナ、悪いがここの後片付けを頼めるかな?トーマ君の実地訓練はもう十分なんだろう?」


 「は、はい。これだけの魔法を発動してもらえれば、判断には困らないかと……」


 「それじゃあ頼むよ。それじゃ二人は私と来てもらえるかな?話したいこともあるしね」


 「は、はい」


 俺はすぐに返事をしたが、アリーシャの方は何も言わない。見ると、顔が土気色をしている。光は紫のままだ。


 「どうしたんだい?お返事は?」


 にやにやしながらアリーシャの顔を覗きこむ支部長。アリーシャは深くため息をつき、


 「はい……」


 と力なく答えた。


 

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