遭遇、シベリア郵便鉄道特急編 第三話 モスクワ・アンダー・ファイア
文化とは、人類という無垢の布地についた頑固な染みのようなものだ。洗って薄くなっても、消え去ることはない。数京個のポストに呑み込まれ、文明が一度崩壊したポスト・ポストカリプス世界。世界は均され、漂白化されたように見えたが、各地に根強くかつての文明の名残がある。
ここはモスクワ。300年前まではソヴィエト・ロシア二重帝国の首都だった街だ。現代では東欧どころかユーラシア最大級の都市であり、大陸横断の貴重な移動手段、『シベリア郵便鉄道』の始発点でもある。
「おお! あれこそはAPOLLON本部が入居するクレムリン宮殿! サハラ支部勤務だったので、一目見たいと思っていたのだ!」
かつて長らくロシアの執政庁として広く知れ渡っていたクレムリン宮殿は、名前だけはそのままだが今は全てポストの赤色に染まっている。赤の広場が文字通りの場所になったのは、少しも面白くない歴史の皮肉であった。
ポスト・ポストカリプス世界で最も身近に存在する建材と言えばそれはもちろんポストである。人々はポストで家を造り、ポストに囲まれながら生まれ、死ぬ。人類はポストによって存亡の淵に追い込まれたが、ポストから齎される恵みで破滅の一歩手前で踏み止まっている。
どの家も赤いが、一部の好事家や金持ちは貴重な塗料を消費して家を塗りわけており、街の風景にささやかな彩りというものを加えていた。遠くに見える段々畑は、スーパーカブ畑だ。
「APOLLON本部なんて行かねえぞ俺は。
かつてのモスクワがどのような街並みだったのか最早知りようもないが、現在は碁盤上に整備され、目抜き通りは幅広く、撤去人たちの努力により地面にポストは一本も生えていない。行き交う人々とスーパーカブの群れ。撤去人共は気に食わないが、歩きやすいのは実際助かる。
「ああ? モスクワのような大都会にも貴様ら配達員のしみったれた営業所があるのか?」
「大都会だからあるに決まってんだろ少しは考えて物を喋れよこのモヒカン」
ピリピリしたやり取りをかわしながら、営業所に向かって歩く。結局タグチはぶつぶつ言いながらも俺達に付いてくるようだった。ナツキは鼻歌交じりで周囲の光景を物珍しそうに眺めている。
「ねえねえヤマトくん。なんだかいい匂いがするね」
「ああ。屋台街か。誰かさんが朝に残った食料全部食っちまったせいで飯抜きだったしちょっと食べていくか?」
俺は半眼でタグチを睨みながら提案した。やったーと無邪気に喜ぶナツキ。子供か。一方俺の当てこすりにタグチは目を剥いて反論してきた。
「吾輩が開けたポストから出てきた食料を吾輩が食べて何が悪い! 貴様ら配達員のルールではポストを開けた物が中身を独占できるのだろうが」
「まあそうだが、貴様らには人権がないとかほざいておいてよく言うぜ……。あとそのルールは中身から出てきたものをきちんと処理することって但し書きもつくからな?」
俺は目についたロシア料理屋台で、ピロシキを二つと少し考えてからビールを二杯注文した。代金を払う。ちなみにポスト・ポストカリプス世界の共通通貨は、切手の形をしている。詳細な原理は不明だが、これを適当な紙に貼ってポストの中に入れると、中から額面に見合っているのか見合っていないのか曖昧な物資が出てくるのだ。ただ切手自体もポストの中からしか見つからないので結局全てポストに依存していることになる。
「お昼からお酒! いいね!」
ナツキは嬉しそうだ。
「あれ? でも未成年が飲んでいいの?」
「いやがっつり成年だから。初めて会った時も俺のことを少年呼ばわりしてたけどそんなに子供っぽく見えるか俺?」
「うん。すごい童顔」
かなりショックだった。確かにこれまでも遠回しに人から指摘されることがあったがこうも真正面から、しかも異性に言われるとは……。タグチは横でガハハと笑いながら自分の分のピロシキを注文していた。朝あんだけ食ったのにまだ食うのかこいつ。
「あいよ! 奥さんと仲良く食べな!」
屋台のおばちゃんが差し出してきたのは顔の半分くらいはありそうなバカでかいピロシキだった。そしてビールは缶に入ったもので、銀地に黒で『曙光』を意味するポストカリプス前の表音文字が書かれている。ポストの中から良く見つかる、かつての日本で最も親しまれていたというビールである。
「えっ――これがこの時代のビールなの……?」
奥さんだって! とケラケラ笑っていたナツキは缶ビールを見て物凄く複雑な顔をした。
『ポストの中の物資を利用している文明ですからこういうこともあるのでしょう』
何故かトライが慰めるようなことを言った。何か地酒的な物を期待していたのだろうか? だとしたら悪いことをしたかもしれない。
ともあれ熱々の肉汁迸るピロシキは中々の美味だった。歩き食いするにはデカすぎるのが難点だったが。中の具材も勿論ポストから採集されたものだが、意外とポストの中身というのは地域差みたいなものが存在し、別の場所では中々お目にかからない物もあったりする。だからこそ俺達配達員が重宝される訳だ。モスクワが現在も栄えているのは周囲のポストから採れる物資の種類の豊富さが一因でもある。
「肉汁あっつぁ!!」
タグチが思いっきり吹き出した肉汁で口の中を灼かれているのを、ナツキが指を指して爆笑している様をうんざりと眺めながらしばらく歩くと、配達員の営業所に到着した。配達員の営業所は真っ青に塗られているので、どこの街に行ってもまず見つけるのに苦労することはない。
「そういえばここに何しに来たの?」
「シベリア郵便鉄道に乗るのにはもちろん金がかかるからな。軍資金の調達と、後は銃弾とかの補給……スーパーカブも買っておきたいし。あとはナツキ、お前の服もだ」
今は俺のコートを着せているからそんなに目立ってはいないが、病人服のままなのはいい加減辛いものがあるだろう。
「換金出来るもの、あるの? はっ、まさか私を売るつもり?」
んな訳あるか。
「貴様――婦女子の売買など吾輩の目の前で行ったらどうなるか分かっておろうな!?」
「お前は黙れ」
営業所の中は雑然としており、青いコートの配達員たちが忙しそうに行き交っていた。役所と雑貨屋を足して割ったような雰囲気だ。俺は二人を待たせると、受付に向かった。
「配達員、ヤマトだ。認証用シグサガワーはこれ」
「お預かりします。少々お待ち下さい」
受付嬢はそう言ったが、少々ではない時間待たされた。配達員の組合は外部には秘伝としている独自の方法で、一部の野生化配送システムネットワークの馴致や再家畜化に成功しており、それを利用した世界的通信網を所持している。APOLLONやその他の実力ある国家とも対等に渡り合えている理由はこれが大きい。ただ家畜化された配送システムは野生のものと違って怠けるようになるのでレスポンスは絶望的に遅く、今回も銃のシリアルナンバーと紐付けられた俺のIDを検索するだけで時計の針が結構な角度を移動した。
「お待たせしました配達員ヤマト・タケル様――おや? 三日前に西サハラ営業所で登録されていますね。なにかの間違いでしょうか」
「いや、間違いじゃない。色々あって三日でモスクワに着けたんだ」
「まさか、ポストを使ったテレポートを行ったのですか? よくご無事で」
「運が良かったよ。それで移動する際に色々失くしちまったから金を借りたい。後補給も」
「ヤマト様はBランク配達員なので審査無しで組合の基金から借り入れが可能です」
俺は細々としたやり取りを受付嬢と交わす。だから気付けなかった。
暇を持て余したナツキが営業所の外に出たことに。それを遠くから眺める者がいたことに。
「おやおや。おやおやおやおや。あれに見えるは郵聖騎士カネヤ・ナツキちゃんじゃないか。1200四半期ぶりといったところか? 今まで何処で何をしていたのやら。懐かしいし挨拶でもしに行こうか、メリクリウス」
『血生臭いやり取りは勘弁ですよ、パトリック』
「やだなあ。ちょっとあそこで銃を乱射してみてナツキちゃんがどんな顔をするか見てみたいってだけじゃないか」
『はあ。まあ止めはしませんよ』
「冗談だよ! もちろん冗談さ! やだなあまるで僕がサイコパスみたいじゃないかそれじゃあ! ただおっかない団長と副団長から逃げ回るのにも飽きたし、久々に団員との旧交を暖めたいだけだよ僕は!」
『そうですか。じゃあ行きますか?』
「ああ。派手に行こう!」
金髪碧眼のその優男、パトリック・シェリルは晴れやかに笑うと、モスグリーンの迷彩柄のアルティメット・カブ『メリクリウス』に乗り込み、殺意を込めた重力制御を開始した――!
ナツキはモスクワの街に入った時から、既にその粘着くような視線と乾いた殺気には気付いていた。トライによる機械的支援がなくとも分かる。それは300年前、戦場で訓練場で――或いは基地の廊下ですれ違う際にすら散々感じ取ってきた馴染みある気配だったからだ。
こちらが気付いていることに悟られないように振る舞っていたが、ますます強くなるその気配に対してついに我慢の限界が訪れた。ヤマトが込み入った手続きをしている間に、
殺気の方向を、強く睨み返す。すぐに来るという、確信に近い予感があった。
果たしてその時。空の彼方で何かが光った――瞬間、周囲がまるで溶けたガラス越しに見たように、歪んでいた!
「おい、なんだこれ!? お前、なんか変だぞ!?」
「いやあんたこそ変に……!?」
「俺はなんともねえぞ!」
通りの歩行人やスーパーカブ搭乗者たちが困惑の声を上げる。周囲に迅速に広がる混乱。それもそうだろう。彼らはお互い同士が歪んで見えるが、自身はなんの異常もないと思っているのだから。彼らの視神経、水晶体、眼球――いや空間そのものが、まるで巨大なゼリーに棒を突きこんだかのようにグチャグチャに潰れているのだから。
『やだなあ! 後半三つは言いがかりだと思うよ!』
空から、声。
「気持ち悪すぎて思わず口に出しちゃった」
『んんーっ! それだよ! その憎まれ口が恋しかった! 久しぶりだねえ、ナツキちゃん!』
モスグリーンの巨大なスーパーカブが、上空50m程の高さに浮遊していた。周囲の歪みに捕らえられた人々が更なる困惑の呻きを上げる。
『いやあこの1200四半期というもの、このポスト・ポストカリプス世界で君の姿を求めない日は無かった!』
「ずっと起きてたのに、その頭の中身は治らなかったんだね」
『ふふふ。おっかない人たちと鬼ごっこをしてたからね!』
「ところで、この周りの人たちなんだけど――開放してあげてくれない? 私と話したいだけなんでしょ、おまえ」
『開放? 開放ね。いいよお、勿論! ――そら!』
キュゴンッ!
異音。
突風とそれに伴う高音――膨張し歪んだ空間が急激に復元する際に空気が立てた物だ。
「――おまえ」
『なるほどお! そんな顔するんだ、無関係で無実な無辜の民が何の意味もなく目の前でクソみたいな男に虐殺された時、ナツキちゃんはそんな顔をするんだねえ! また君のことが一つ知れて僕は嬉しいよ!』
空間の膨張速度は宇宙の物差したる光速に縛られないことを利用した、超光速の空間の膨張と復元が齎す回避不能の必終の一撃。巻き込まれた人々は復元の際の衝撃で素粒子レベルまでバラバラになり超光速粒子流となって地球から飛び去っていった。いずれどこかの惑星でガンマ線バーストとして観測されるかもしれない。1Km先まで抉れた地面と建物だけが後に残った。この破壊による混乱は特に起こらなかった。目撃者は皆死んだからだ。
『あれれ? 怒ったのにアルティメット・カブを出さないのかい? 久しぶりに手合わせをお願いしたかったのに、どうしたっていうんだい?』
じゅる、じゅる、じゅる。
およそ金属とは思えない奇っ怪な液体音! それはメリクリウスが人型に変形する際に立てる音だ! その機体表面の迷彩模様が不気味に蠢き、野放図に各所を走る白金色のパワーラインは刻々とその濃度を変える。
やがてカブの装甲やパーツが溶け合い、一塊のモスグリーン色の球体へと変態する。その様はまるで蛹か卵だ。球体表面に走るヒビに沿って『卵』が破れると――中から手足を丸めた配送機モードのアルティメット・カブが現れた。
『何人も、騎士団の庇護下において差別されることがない、と。うん差別することなく消してあげたんだよ、僕は。こんな変な世界で生きるのって大変そうだし』
メリクリウスは重力制御により音も無くモスクワの市街地に降り立つ。白いモノアイの中央に黒い『〒』マーク。その右手には空間膨張砲。爬虫類の皮膚の様に濡れて光る装甲。機体表面を毒々しく這いずり回る迷彩模様。
アルティメット・カブ『メリクリウス』は、カンポ騎士団の中にあって特異なる機体だ。カンポ騎士団の――少なくともナツキが信じて戦ってきた――敵は、テレポートの際に障害となる『
『まあだトリスメギストスを呼ばないのかい? それとも――呼べないのかな?』
銃口をナツキにピタリと合わせ、悪魔はまるで笑むかのようにモノアイを細めた。
――キュゴンッ!
その凄まじい破壊音は当然営業所の中にまで響き渡った。中にいた配達員達は全員一旦伏せた後、顔を見合わせると銃を構えて外に飛び出していく。
「おおお!? 何事だ!?」
ベンチから転げ落ちたタグチが慌てて起き上がるが、そこは腐っても撤去人、緊急事態を感じ取ると軍人らしい顔つきとなって皆に続いて外に駆けていった。俺も受付から自分のシグサガワーをもぎ取ると、装弾されているのを確かめて外に、
「おい、タグチ! 出口付近で立ち止まってんじゃねえ!」
出ようとして、硬くて広い背中にぶつかった。だがタグチは返事をしない。辺りを見渡すと異様な破壊痕。そしてタグチと同じように立ち尽くす配達員たち。彼らの視線の先には――
「ナツキ!?」
巨大な人型アルティメット・カブと、生身の徒手空拳で戦うナツキの姿があった!
「おいおいおい何やってんだよあいつ!?」
繰り出される圧倒的大質量の掴み、殴り、蹴り! それら全てを最小限のステップで躱し、半身になって避け、上体を逸らしてやり過ごす! それはまるで人が華麗に飛び回る蝶を捕まえようと躍起になるような、あるいは羽虫を鬱陶しがってはたき落とそうとしているかのような様であった! これこそがテイシン・カラテ奥義、反重力の型である!
『まさか、まさか、まさかだよナツキちゃあん! 僕の重力制御圏を逆に利用して高速移動するなんて! やっぱり君はすばらっしい!!』
ねっとりとした喋りの男の声が響く。あのアルティメット・カブの
「おいあんたら、何をぼさっと見てるんだ! 市民の避難とかナツキの――あの女の子への援護射撃とかしろよ!」
俺の言葉に、圧倒的理不尽を目撃して自失していた配達員達は我に返ると、行動を開始した。
「やめて! 早くここから逃げて!! メリクリウスとパトリックに勝てる訳ない!」
ナツキが敵の攻撃を必死に捌きながら叫ぶ。
「逃げられるわけ、ねえだろうが!」
俺は周りの配達員達と呼吸を合わせ、圧倒的格差の敵――メリクリウスに対して連続射撃を開始した!
「「「ハンコオネガイシマース!!!」」」
BRATAT! BRATAT! BRATAT! BRATATATATAT!!!
空中にて赤熱した線となるほどに収束された安定超ウラン元素弾頭弾が秒間数百発叩きつけられる! 並のバケモノなら即死し、撤去人共のハイエースすら耐え切ることは厳しい圧倒的火力の奔流!
だが――!
『やだなあ。久しぶりにナツキちゃんと遊んでるのに無粋だよそれは』
弾はことごとくメリクリウスの周囲に展開する強重力場に捕らえられ、その背後へとすり抜けていってしまう! やはり重力制御できるような超常の相手に、ただの銃では……!
『君たち。ナツキちゃんのナイス表情を引き出す素材になってくれたまえ』
メリクリウスが、手に持つ禍々しき形状の筒をこちらに向ける。いかん、死んだ。これは死んだ。
長年の配達員としての勘が逃れられない終わりを直感させたその時、俺の視界の端に唐突に『〒』マークが浮かび上がった! それがターゲットサイトだと、何故か俺は即座に理解していた。そして理解と同時に引き金を躊躇なく引き絞る!
BLAME!
放たれたのはたった一発の弾丸。しかも明後日の方向へと飛んで行く。だがそれは過たずターゲットサイトに命中し――何もない筈の空間上で唐突に軌道変更して更に加速、メリクリウスの重力エンジンのメインパワーラインに突き刺さった!
メリクリウスの強重力場の〝穴〟を穿ったのだ!
『……なっ!?』
「えっ、ヤマトくん!?」
ナツキとパトリックの驚愕の声。もちろんその程度で揺らぐアルティメット・カブではない。だが全身を駆け巡るエネルギーパワーラインが一瞬点滅し、空間膨張砲の狙いが僅かに逸れた!
キュゴンッ!
俺達の僅か30センチ隣を破壊的空間渦動収縮の力が通り過ぎ、射線上にあったもの全てを無に還す!
「今のは、一体……」
撃った俺自身訳が分からず呆然と呟く。
『……まぐれ射撃で調子に乗ってんじゃねえぞカス虫があああああああああああああ!!!!』
吠え猛るパトリック、そして重力エンジン! ダークエネルギーの陽炎が瞬間的にメリクリウスを包み込む!
バシャバシャバシャ! メリクリウスの液体状装甲を突き破り、ハリネズミのごとく小型の空間膨張砲の砲塔が数十基展開した! その全てに白金色のエネルギーラインが接続され明らかに発射完全スタンバイ体勢!
その次の刹那、複数の事が同時に起こった!
順に見ていくとしよう!
まず遠距離から大質量弾頭が次々とメリクリウス周辺に着弾、爆発、破砕、道路陥没!
「ペリカン勲章保持者の吾輩が声をかければ本部戦力を動かすことも余裕よお! 見たか配達員ども! 見たか謎の巨大スーパーカブ! これが我ら撤去人の力だあ!」
クレムリン宮殿の方角! アルティメット・カブに負けないほど巨大な多砲塔戦車、グレート・ハイエースが全砲門から大口径榴弾を発射したのだ! 完全に意識外からの奇襲と崩れた足場に、さしものメリクリウスも動きが取れなくなる。
次! 俺は着弾とほぼ同時に連続する爆発の中足も千切れよと全力スプリントすると、ナツキを抱きかかえ逃走を計る!
『なにナツキちゃんに手を出してんだこのダボが!!!!』
背後からメリクリウスの腕が迫る圧力!
「ヤマトくん下ろして! 君が死んじゃうよ!」
『いえ、その必要はありません』
トライが冷静に言った。
「そうだ下ろせるわけねえだろ!」
『〝鬼〟が来たようですから』
「「え?」」
俺とナツキは揃って間抜けな声を上げた。
最後に起こった、決定的な事象。
『あ? クソ、もう追いつかれたのかよお!?』
それは、空から出し抜けに顕れた、もう一機の黒銀のアルティメット・カブ。
「あれは――?」
訝しむ俺の耳元で、ナツキが「そんな……」と小さく震えた声を出す。
「『ガブリエル』……!」
堕した天使は、11の下僕を従えながら、静かにモスクワに降臨した。
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