日記② 夏炉冬扇
「夏炉冬扇」
こんな言葉使う機会あるのかと思っていたがその時は突然きた。
今日は雨上がりの快晴で夏にしてはそれなりに涼しかった。
私は多汗症なためこんな朝は願っても無い幸福だった。高揚した気分で学校へ歩く。少し汗はかいたものの駆け巡るながし南風が逆に汗を通じて爽快感を与えてくれた。
いつもは重たい身体も今日ばかりは言うことを聞いてくれているようだった。
今日は何もかもがうまくいきそうな気さえした。
心を踊らせて校門をくぐった。
私の教室は4階にある。其れが指すことは一つ、疲弊した足で悪魔の螺旋を登らなければならないと言うことだ。悪魔の螺旋は閉鎖的空間であり、外の幸福など気にもとめずに襲いかかってきた。
でも私は夏の悪魔だけは嫌いではなかった。
それは登りきった先にクーラーの効いた天国が待っているからだ。
のしのしと登る音も4階に近づくに連れてタッタッタッタと弾むような軽く短い音になっているのが分かった。
教室の前に着いて思考放棄で天国のドアを開け放った。
………ん?
何かがおかしい。
それは思考停止していても分かるほどの事だった。皮膚の感覚神経が早くドアを閉めろと言ったように思えた。
咄嗟にドア閉めたが時すでに遅しであろうはずもない生温い風が次々と身体にまとわりついてきた。
何かの冗談ではないかと思い冷静になって有るべき天国のドアを再び開放した。
瞬間、つい先ほど体験した熱がクラスター爆弾のように押し寄せて炸裂する。
あぁ、完全に理解した。
此処は人の叡智が生み出した天国ではなく、人の叡智が生み出してしまった地獄であるということを。
下るに連れて冷涼になる空気に私は、
この螺旋は地獄への道でもあり、天国への道でもあるのだなと。そしてこれらは互いに排反事象なんだなと思った。
そしてそんな中私はこの四字熟語を思い出した。
「夏炉冬扇」
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