第24話 王都の宿屋①

「今日は来てくれてありがとう、メシア様!!」


 そう言ってメアリー王女は軽く会釈をしてくる。

 僕も軽く会釈をし、微笑みかける。


 夕日が辺り一体をオレンジ色に染めている。


 下の方を見ると行商人たちの数も少なくなり、美しき聖歌のような歌が教会から聞こえてくる。

 空には黒鳥が数羽、のんびりと飛んでいる。


 先程まで僕は三時間にわたってニコライと一緒に討議していた。


 内容は僕の領地経営の方針である。


 どうやら他の王国内の貴族領主たちは、やはり苛政を敷いており、領民たちの幸福とか支持とかそんなのは全然考えていないようであった。


 従って僕のような力に任せず、領民との一種の合意形成のようなプロセスで統治しつつ、税収をも上げるやり方は新鮮だったようだ。


 まあ、地球の歴史でも、福祉とか子供の保護とかそんな話が出るのは割と最近だもんなぁ……


 そんな訳で、勉強熱心なニコライ氏は多くのことを吸収しようとし、気づいたら夕暮れ時になっていたのだった。


 途中まで王女様は頑張って聞こうと思ってくれていたが、


 流石に退屈になってきたのか……途中でお眠りになってしまった。


 という訳で、王女様はそっとして置いて、僕達ふたりは書類作成をして、それを受け取った。


 王女様は僕が帰ろうとする直前に目が覚めたようで、慌てて見送り出てきてくださったのである。


 ミーシャさんも王宮で幾らかの仕事を済ませ王女様に別れの挨拶をしていた。


 王女様はふとこちらを向き直し、言った。


「あ!そうですわ!!

 これからしばらく、メシア様は領地で色々されるでしょうし……私も忙しいので……

 何かあったらミーシャに言ってください!!

 ミーシャならあの手この手で私と連絡が取れますからね!!

 もちろん!!秘密の話でもですわ!!」


 ミーシャさんがうんうんと得意げに頷く。

「こういうのが私の仕事です!!」


「二人ともありがとうございます!!」


 こうして、ミーシャさんと僕はまた馬車に乗って王宮を離れた。

 ゴトゴト揺れる馬車には、王女様とニコライ氏からの沢山のお土産を積んでいる。


 ▼▼▼▼▼▼▼▼


 夕闇に包まれた王宮。


 廊下を歩く一人の人影がある。


 その人影はある部屋に入りドアを閉めた。


 コツコツコツコツ……


 階段を下る音が廊下に響く。


 ガチャっ……


 扉を開いた先には、白い剣が象られた祭壇があった。


 その人は赤アプレの果実酒、

 ーそう今日謁見に来た来客が置いていったもの……恐らくご機嫌とりとみて良いだろうー

 をひとつ取りだし、グラスに注ぐ。


 ごくごく……と飲み干したその人はニヤリと祭壇に微笑む。


 さあ、ここから楽しくなりそうだ。


 そう呟くと、グラスを祭壇に置いた。


 ▼▼▼▼▼▼▼▼


 宵闇に包まれたバーミラの街。

 辺りを見回すと暗い。

 人通りもまばらである。


遠くからは教会の鐘楼の音が鳴り響き、夜のはじまりを伝える。


 目の前を流れる川には仄かな灯火とともに、三隻の船が下っていくのが見える。


 冷たい風が吹き始め、昼間の暖かさが嘘のようである。


 その日の夜は、王都の宿屋に泊まった。


 ちなみに王女様の奢りである。

 ここはこの国でも1番の高級宿らしいが、そういう訳で僕のお財布は全く痛くない。


 馬車を止めて貰い、荷物をあのいくらでも入る袋に収納する。


 いくら入れても入るし、オマケに全く重くない。

 素晴らしきアイテム!!!


 後ろからミーシャさんがフードを被っておずおずと馬車をおりてきた。


 受付を済ませ、部屋に入る。既に料金は王家のツケという形支払われていた。


 通された部屋はひとつの大きな部屋であった。


 え?1つ?


 ミーシャさんが後ろから入ってきてパタン、とドアを閉める。


「一緒の部屋ですね」


 戸惑いながらミーシャさんの方を見るけれど彼女は特に気にする様子もない。


 フラートさん、まだ子どもですし……

 そもそもですけど、私信用してますから!!


 それに、いっつも1つ屋根の下です!!


 そんなノリで言われたので、僕も気にしないことにした。


 そして……お風呂に入った。


 途中でミーシャさんが入ってきて……

 ふわふわの尻尾で撫でられながら体を洗われたけど……


 平常心、平常心。


 絶対にやましい心は持っちゃダメだ。

 主従の前に、純粋に僕のことを可愛がってくれてる。


 お風呂を上がってベッドに寝転がっていると、後ろから温かな体温が体に触れる。


 後ろを振り向くとミーシャさんの大きな……む、胸がある。


 ぎゅっと抱きしめられて……


 って、おねショタか?僕はショタじゃないいいいいいいい!!!!!認めない!!!!


「フラートさん、貰ったお土産を見てみませんか?」


 風呂上がりで火照った顔をこちらに向けながらそう言ってくるミーシャさん。


 我にかえり、収納袋の中から取り出してみてみる。


 貰ったものは……


 ・領主の証明書(署名付き)

 ・伯爵の地位の証明書おまけ

 ・この国の歴史書とこの世界の歴史書、全部で10冊

 ・資金

 ・王家の通行証

 ・正装用の服?一式


 領主スターターセット??

 面白みにはかかるけど実用性なら多分ものすごくあるものだろう。


 この王国での立ち振る舞いが楽になるかもしれない。


 ありがたく頂いておこう。


 それにしても眠い……カーテンを開けて外を見ると……

 見たけど何も見えない。

 地球的な感じで行くと深夜0時とかか?


 アニメとかにリアタイするならいい時間だなぁ。

 アニメここじゃ見れないんだけどね?


 そんなことを思いながら私が眠りについたのであった。

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