第22話 謁見
扉が開くと、その先には2つの豪華な椅子があった。
赤い絨毯が敷かれている。
そこを王女様の先導で歩いて行く。
「こちらで片膝をついてお待ちください、メシア様」
この王国での礼儀作法はミーシャさんに教えてもらったのでだいたい大丈夫である。
すっと片膝をついて、こうべを垂れて王が入ってくるのを待つ。
「スカーレット朝ローテン王国、第33代国王、スカーレット33世の御成である!!」
先ほど前にいた黒衣の男がそう叫ぶと、王が入ってくる音がした。
「ほーう?」
野太くしわがれた声が聞こえてくる。
「こちらがメアリー様のおっしゃっていた方です」
黒衣の男が王に囁く。
「そうか……頭を上げよ」
そう言われ、頭をあげる。
目の前の椅子に老齢でいかにも狡猾そうな見た目の男が座っていた。
「メアリーが大事なお客というから誰かと思ったが。小童か。
貴様は何をしに来たのだ?まさかからかいに来ただけじゃなかろうな??」
品定めをするような目線というのはあるが、
この国王の目は相手を見下している、そんな感じの目であった。
「普通ならお前なぞの話は聞いてやらんのだ。
わしは忙しいんでな。
要件があるなら早く話せ、小童」
けっ、と馬鹿にしたような声を出す国王。
「恐れ多くも国王様。お願いを上奏したく思い、参りました次第でございます」
僕の声変わりしたてのような少し高い声が広間に響き渡った。
黒衣の男はニヤリと笑った、
は?と国王は言った。
「なんじゃ小童。
今なんといった?わしゃ耳が遠くてな。よう聞こえんかったわ」
ふはははははは。
おいじじい、いや失礼。おい国王、さっきの黒衣の男の囁きが聞こえて僕の大きな声が聞こえないとかどういうこと?
隣の方にいるメアリー王女も澄ました顔をしているが、イラついているような雰囲気を醸し出している。
手足をしきりに動かしている。
この国王、なんかやっぱり嫌な奴……
権力を持ってるからって舐めてるなこいつ。
あ……こいつとか言っちゃダメだね失敬。
でも、内面の思想は自由なはずだろう??
声に出さなければいいんだよ。
「えっと、ですからお願いが……」
「そんなことはわかっておるわ。
わしが聞くに値するお願いとやらなのか??それは??」
相変わらずこちらを子供だと思って見下す態度をとってくる。
うん、まあ子供の見た目なんだけど。
中身も別に高校生は大人というわけでもないか?
いや某探偵アニメ的にはいわゆる頭脳は大人なのか?
とにかく。前の世界じゃ178cmあったのに、今じゃ150cmくらいのものだよ。
結構小さいほうじゃない?この世界の15歳の平均身長がいくらかは知らないけどさ。
ミーシャさんとかでも僕より大きいし、すれ違う人が僕より背が高くて、すごく縮んだ気がする……
「ええ、それだけのお願いでございます。
単刀直入に言いますと、私をローテン南方領の領主にしてください」
ローテン南方領というのはあの元ミーシャさんのお屋敷でこの前買った屋敷の辺り一帯のことだね。
今は領主不在で臨時でプテロートの役所みたいなとこが一緒に管轄してるらしい。
「ははっ??
小童が領主か?面白いな」
ニヤリと笑う国王。
はっと身構えるメアリー王女。
「だがな、わしを舐めるのもいい加減にしろ。お前なぞ一捻りなんじゃぞ」
黒衣の男に目配せする。
そうおっしゃると思いました。
「いえ、本気です。
私は確かに子供ですが、今回は私を領主にしていただくことでローテン王国と王家の皆様に多くの利益を生み出すことができると考えております。
その為、そう、実利的な話をしにきたのです。お話を聞いていただいてからでも構いません」
きっぱりと言い切る。
目の前の子供が堂々としたことを言い切ったからなのだろうか。
国王はほう……と思案顔になった。
「具体的にはどんな話だと言うんだ、小童」
こちらの話を聞く気になったか?
これはいい流れですね。
まずは話のテーブルに立ってもらうのが大事。その為には相手に興味を持ってもらえるように仕向ける必要がある。
「はい。
具体的には、3点。
農業生産のさらなる向上、それに伴う税収の増加、そして、それと並行して民からの求心力の向上、を起こすことができると考えております」
相手に何かを例証する時はスリーポイント。
多すぎず少なすぎず、まとまってる感じがする為、演説やプレゼン、説明文でもなんでも、言語を問わず好んで使われる数字だ。
「なに?小童、お前は税収を増やす上に民の求心力もあげられるというのか?
税を増やせばそれだけ不満が増える、そこでまた規制を強めないといけなくなるだけじゃないのか?」
なるほど、絶対王政の時代みたいな古い考えだな?
この世界水準ではそのくらいの時代かもしれないが。
「いえ、違います。私のやり方なら、両方とも両立させることは可能です。
何故なら、第一に、税率は下げるからです」
そんなことできるわけない!!という怒声が聞こえてきそうだが、話を続ける。
「税率を下げても税収が上がればいい。
その為に農業生産を増やすのです」
こんな話は税をどうするか考える時の常識かつ常套的な話だ。
「この為には話すと長くなりますが私の方法を取り入れるべきです。
その為に私を領主にしていただき、その地域の経営を一任していただきたく思うのです」
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