第21話 ローテン・パレス
しばらく大通りと思しき道を行くと、街の中心部に近いところに小高い丘が見えてきた。
そしてその上には。
「あの丘の上が王宮です」
ミーシャさんが指さす方を見ると、まさに映画とかで見るような王宮が見えてきた。
所々に赤い装飾が施されているようで赤みがかって見える。
ローテンには赤という意味があるっぽいし、やはり赤がイメージカラーか……
てか、ドイツ語じゃね??
「ドイツ語?どこの言葉?でしょうか……」
「なんでもないですよー!!」
ここは地球じゃない。
人間の言語なんて表音できる音は限られてるし同じ音、意味のものがあってもいいじゃないか。
そんなことを思っているうちに、馬車は緩い坂道を上り始める。
来た方と反対側の円形城壁の向こう側、遠くの方に海が見える。
日差しは穏やかでCs......地中海の気候を感じさせるような場所だ。
坂道の両側には日差しを受けて輝く硬葉樹。
良い陽気なので結構暑くなってくる。
おもむろに扇子、そう例の王家の扇子を取り出してみた。
王族しか持ってないものを見られたらまずいかな?
最後のカーブを曲がり、宮殿前の城門に辿り着く。
「ここが、バーミラ宮殿の南門です。
ここをくぐったらすぐ玄関があるのでそこで止めてもらいます」
ミーシャさんが言ってまもなく、馬車が止まった。
城のように高くそびえ立つ赤き宮殿ローテン・パレス。
その入り口である小綺麗な大理石の玄関にはすでに1人の少女がいた。
「メアリー王女!!お久しぶりです」
彼女に微笑みかける。
「メシア様、お久しぶりです。ミーシャもおひさ!」
彼女の目線が僕の手の方を向いている。
「えっ?!それって……」
しまい忘れてたな……
「王家の扇子、というらしいですね」
隠すのにも遅いので正直に答えた。
「なんで持ってらっしゃるの?!」
「それはもちろん……
女神エリス様のお力でございますよ」
適当に答えてみた。
聞いてびっくり。
なんとこれはメアリー王女の持ち物だったらしいのだ。
先日急に消えたとかで焦っていたらしいが……
別に盗んだわけじゃないですからね!!
急に手元に現れて……
持っていた経緯というほどでもないがを話して納得してもらった。
「王女様の私物ということならお返ししたほうがいいですね」
▼▼▼▼▼▼▼▼
「あれは誰なの?」
ここは王宮の五階の廊下の窓である。
南玄関のほうを眺めながら、女王エリザベートが侍従に問うた。
「良くわかりませんが……
メアリー様のお客様のようです」
感情のない声色で若き侍従の少女が答える。
「見た感じ貴族らしくもないわね。
あんな安っぽい……しかも子供の様。
なんであんなのがこの崇高なる王宮に来ているのかしら」
不機嫌そうである。
「詳しくは知りませんが、かなり大事なお客様の様ですので……」
「そう?まあいいわ。
そんなことよりあ・れ・はまだなの?あ・れ・は」
少女の顔色がこわばる。
えっと……
黒衣の男がふっと現れた。
「それは私めの案件でございます。
首尾よく進み、5日後には調達できるかと……」
エリザベートは笑みをこぼした。
「そう、良かったわ……」
「でも……もうストックを切らしちゃったの……
新しいのが必要ね……」
にこっと侍従の少女に向かって微笑んだ。
ビクッと少女の方が反応した。
「次はあなたの番よ、光栄に思いなさい」
日が雲に隠れ、暗くなる。
その一瞬に黒衣の男と共に……
そう、少女は消えてしまった。
廊下に響く小さく甲高い呻き声を残して。
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王宮の廊下を、メアリー王女、ミーシャさん、僕、そして護衛の人たちとともに歩いていく。
「すぐに会ってもらうことになるけどいいかしら?」
「ええ、大丈夫です」
例の収納袋にはこの前買った赤アプレのお酒と袖の下セットを入れている。
いざ、王に会うとなると緊張するな……
どんなに悪人だとしても仮にも一国の王なのは確か。
侮れない。
護衛の人ってのは王女様の護衛なので、僕を裏切ることがないとは限らない。
マナー違反だとはわかっているけどこっそりステータスをのぞいてみよう……
性別: 男
種族: 人間
レベル: 80
スキル一覧:
剣術Lv8
知力Lv8
体力強化Lv6
速力強化Lv8
威圧 Lv2
護衛Lv9
(スキルレベルは上から、神、極、Lv10→Lv1となっています)
どの人もこれと同じくらいのレベルだった。
一応僕のレベルの方がどれを取っても高いので対処はできそうか……
彼らの武器は王国の剣。普通の剣よりはいい材質の様だが僕の持つ女神の剣ほどではないようだ……
スキルが強いからといっても僕には経験がない。
やはり用心が必要だ。
そんなことを思っていたが結局何をされるでもなく重厚な扉の前に辿り着いた。
「この先の謁見の間で王に謁見してもらいます」
護衛の人たちに下がりなさい、と王女様が命令すると護衛の男たちが下がっていく。
「準備はいいですか?」
「はいっ!!」
重厚な扉が開いて行く。
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