第20話 バーミラへ!!
王女様達はすっかり元気になったので、王宮に帰ることになった。
2人が帰っていくのを見送った。
初めは王家から隠れて色々やろうと思ってたけど、
ふと、王家に取り入ることを考えて、
いつのまにか王女様に出会い、
そしていつのまにか王様に会える感じになっている。
なんだか運がいいようだ。
ミーシャさんがさっきまで2人が使っていたベッドや食器などの片付けをしてくれている。
「ちょっと、化粧で汚れちゃってますね……洗わないと」
ミーシャさんは王女様側の人間だとわかった。
こんなことを聞いてもバイアスがかかってしまって意味がない気もするが。
「ミーシャさん、こんなことを聞くのは失礼ですが、王女様は信用に足る人物ですか?」
手を止めてこちらを向く。
少し考える風にしてこう答えてくれた。
「王女様は信頼してくださって大丈夫です!
私が言うと偏った見方になるかもしれませんが」
あ、そこまでお見通しか……
「王家においてあそこまで性格がさっぱりした方を見たことがないです。
私たちのようなものに手を差し伸べてくださり、優しいのはもちろん。
真面目でしっかりしてますね……
信用していただける要素は十二分にあります」
そう言うのなら。
元の世界では基本的に人は疑ってかかるところからはじめていたが……
どちらかというと性悪説?的な考え方なのである。
しかし、王女という立場でありながら、そして、娘でありながら……
あわよくば倒してしまおうとしてるからには本気なんだろう……
冗談でもそんなことは言えないだろうし。
ひとまず信じてみよう。
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我らがローテン史においても、多くの重要な分岐点というものがあってだね……
ある夏の昼下がり、白髪のおじいさんが教壇に立って話を進める。
教室にはブラインドがかけられ、強い日差しが入ってこないため快適である。
教室にはからっとした爽やかな夏風が吹き抜け、疲れからか?それとも満腹感からか?
居眠りをしている生徒も見受けられる。
モニターに一枚の写真が映し出される。
皆もよく知っている「彼」が、時の王、スカーレット33世に会いに行ったのもまた大きな分岐点じゃ。
「彼」はこの時初めて歴史に出てくるわけじゃがそれ以前のことは全く分かっておらん。
巷では救世主と呼ばれていて、神格化までされていたそうじゃがな?
大陸暦1908年、「彼」は従者とともに当時の王都バーミラに行き、宮殿にて王と対面した。
「彼」の目的は、ローテン王国内にあった南方領の領主になること。
南方領は、王都から少し離れたプテロートを中心とする一体じゃな。
当時、王女だったメアリーの口添えもあり王と「彼」は対面したのじゃ。
ここで話された内容については諸説あるのじゃが、
一説によると、徴税の仕方や技術改革を行うこと、そしてその税金を十二分にスカーレット33世に納めることを約束し、納得させたと言われておるな。
相手の利益になるような話を前に大きくぶら下げて、その実自分に有利なように話をまとめていたようじゃ。
その後何があったかはこれから学習していくが、既に知ってる者も多いじゃろうな。
ジリリリリリリリリリ……
鈴がなり、授業時間の終わりを告げる。
赤アプレの実を啄む白鳩。
その白鳩が描かれた校章をつけた生徒たちは一斉に立ち上がり、食堂へと向かっていった。
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プテロートからバーミラまでの距離は近いという程でもないが別段遠いということもない。
馬車で数時間揺られるとそこにはもうバーミラの街の円形城壁が見えてくる。
今回は王女様が用意してくれた王家直属の馬車なのでVIP扱いなのだろう。
とてもスムーズに街に入ることが出来た。
プテロートは寂れた街という印象であったが、ここバーミラはそこまででもなかった。
そう、あくまでそこまででも。なのである。
頭にターバンを巻いた商人風の男。狩猟民族なのだろうか?肉や毛皮を持つ熊人族とでも言うべき亜人の商隊らしきもの。
商人が行商に来ているのだろう。
プテロートよりは人通りが多く感じる。
けれども活況という程でもない。
道にはいくらかの馬車が行き交い、空には……
竜だ……
圧巻の大きさで翼を持つその生き物は一目で竜だと理解出来た。
「空を飛んでるのは竜商人です!!
遠隔地貿易を支えてるんですよ!!
生の食べ物とか王家の高額な品物とか速達品は竜が運んでるんです!!」
ミーシャさんがまくし立ててくる。
その勢いもだが、やはり初めて見る竜の姿に気圧されてるのだろう。
この街もやはり税が高く商売がしにくいそうだ。
他の国の首都はもっと賑わってるらしい……
目先の税収より経済発展による税収増を期待した方がいいのになぁ……
はぁ……と竜への感嘆とも王国への呆れともとれないため息を吐く。
馬車は王宮を目指して進んでいった。
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