第15話 計画

「さて、契約内容はこれでいいですか?」


 僕は作った簡易的な契約書を見せる。

 安心してください。

 きちんと、この王国において法的根拠を持つ契約書だよ?


「はい!これでお願いします」

 そう言って指で判を押してくれた。


 前のあの斡旋所では奴隷契約だったそうで……原理はよくわからないけど呪術的な奴隷紋によって支配されてたらしい。


 その奴隷紋とやらは、あの主が殺された瞬間に契約消滅して、消えちゃったらしく見ることは叶わなかったけどね。


 ミーシャさんの指紋が綺麗に押されている契約書を見て満足げにうなずく。


 契約成立だね!

 よろしくお願いします!


「さて、ここからが本題なんだけど……」


 ふと思いついたことなんだ。

 金はある。

 欲しいのはこの王国の情報。

 屋敷もある。


「僕、この王国の臣下になって領主になってみようと思うんだ」


先刻考えていたことを全て覆すスタイル……良く言えば柔軟なのだが……


「え?そんなことができるんですか?!」


「できるかどうかは知らないけど……

 まあ、出来るか分からない!じゃなくて、やり遂げるんだ!!

 どうせこの国の王様はがめつい野郎なんでしょう?」


「ええ……もうそれはそれは……

 こんなこと言うのもアレですけど金だけならまだしも人としてもゴミです」


「なるほどねぇ……」


 楽しそうなおもちゃだと思った。

 この世界には私の入れ込んでいたアイドルもアニメも漫画もない。

 親にはうっすらしか知られてなかったけどオタクと呼ぶに相応しいレベルではあったと思う……


 まあ、つまるところ……

 自分でドキドキワクワクの楽しい日々にしないとね!!

 この世界を平和にするという女神様からの使命もあることだし、一石二鳥!!


「ミーシャさん、早速お願いがあるんだけど……」


「はい!」


 さあ、早速企みのスタートである。


 ▼▼▼▼▼▼▼▼


「おや、あの時の坊やじゃないかい!

 今日はどうしたんだい??」


 次の日、酒屋に行き、酒屋のおばちゃんに出会った。


「おはようございます!!

 ちょっとお聞きしたいことがあって……」


 これまでの話(あ、もちろんやばいと思われる話は除いてるけど)をしてから本題を切り出してみる。


「この辺りの特産品とかないですか?

 贈り物に出来そうなやつで……

 あと高価なのをお願いします!!」


 企みの話に関連して……


 やっぱりクズ王様に取り入ってみる……うーん?交渉の席に座るには金とカモフラージュの品でしょう。

 袖の下……いわゆる賄賂……


 越後屋、調子はいかがでい?

 ふふふ、おかげさまで。お饅頭です。


 箱の中には小判がキラキラキラー!!


 想像してニヤリと笑ってしまう。


 酒屋のおばちゃんが怪訝そうな顔でこちらを見ている。


 おっとまずいまずい。

 企みがバレたら大変だ……

 って思考がもはや悪人やないかーい!!


 と1人で突っ込んだところで。


「そうだね……

 このお酒とかどうだい??

 プテロート産の赤アプレの果実酒だよ!!」


 そう言って小瓶に入った赤いお酒を取り出してきた。


「うちが酒屋ってのもあるけどね、この辺は果物が有名なんだ。

 街を通る旅の人とかに買って貰えればお金になるし……

 収穫量はごまかせないけど、商品の売上はごまかせるからね!!

 ここだけの話、良い税金逃れと稼ぎになるわ」


 そう言って苦笑いをしていた。


 ならこれで良いかな?

 多分、王様とやらはお酒飲めるよね??


「まいどありー!」


 赤アプレのお酒それも最高級品を店にあったありったけ、10本買って、金貨10枚分……日本円で100万円かあ……


 なかなか良い値段だね!!

 カモフラージュにしては高くついたかな……


 そんなことを思いながら、他にも下準備をいくつかしてマイホーム……屋敷に帰った。


 ▼▼▼▼▼▼▼▼


 帰るとすぐにミーシャさんが出迎えてくれた。

 メイド服が動きやすいだろうし何より、かわいいので、そのまま前のあの店の時と同じのを着てもらっている。


 こう、お屋敷にメイドさんの出迎えとなると本当にそれっぽくて感動する。現代日本とは違うところにいるんだなーって。


 そりゃ、メイドカフェとかだってあるけどさ??やっぱり自分が屋敷持ってて出迎えてくれるメイドさんってのがいいじゃないか??


持論がうるさくなりそうなのでこの辺で。


肝心なことを聞く。


「そちらの調査の方は終わりましたか?」


「ええ……

 ただ、やはり王様に会うのはそう簡単じゃなさそうです。

 謁見の許可を得るか、外に出られた時に直接上訴するか……

 今回のケースだと謁見の許可を取らないとですね」


 そう言いながら、

 ーいつ、どこで用意したのだろうかー

 お茶を出してくれる。

 この世界にも紅茶のような飲み物があるようだ。ここの気候でお茶って作れるのかな?気になる……(そんなことはどうでもいい)


「その謁見許可とやらはどうやってとるの?」


「謁見を求める理由とそれ相応の身分であることの証明が必要ですね

 それを書類に書いて出す感じです。

 許可が下りれば会って直接話ができますが……」


理由か……えっと、領地くれ?!

うん、却下。


身分?

私の身分ってなんだ?平民?相応の身分ってやつじゃあ無さそうだ。却下。

神の使い?ヤバいやつだと思われそう。最悪神を騙る野郎め……殺してやるとかなりそうなので不味い。


「もちろん、理由とか身分をどうしよう……っていう問題もあるけど。例えクリアしても……その許可はなかなかおりないんだろうね」


「ええ……」


 いきなり問題発生だな……

 国王に会えないことにはこの話も始まらないじゃないか。


 どうしたものか。


「ちょっと散歩しながら考えてくるよ」


「分かりました、いってらっしゃい!」


 そうミーシャさんに言われて、見送られて邸の玄関を出た。

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