第8話 家を探そう・続
店主が差し出してきた手書きの資料を見る。
プテロート郊外の野原に立つ大きな邸宅。
部屋は10以上あって、中庭と立派な玄関もついている。
お風呂も大きなもので、まさに貴族のお屋敷とでも言える建物である。
ふむ、良さそうだな。
でもこんな豪邸、予算内なのか?
「値段はいくらくらいなんですか?」
「えっと……かなり安かったはずだ。
だよな?ミーシャ??」
猫人族の若い女性、ミーシャさんと呼ばれたその女性の方に店主が目配せをする。
少し彼女の顔が曇ったような気がしたのは気のせいだろうか。
彼女は書類が大量にある棚の中からスッと1枚の紙を取り出して店主に渡した。
「大丈夫だ。白金貨100枚くらいだ」
そうか。ならば安心した。
金額が裏から透けて見えてるんだよな。
白金貨30枚じゃねえか。何ぼったくってるんだこいつ。
この店主はやっちゃっていい相手だな?
ただ、ミーシャさんが何か言いたそうに僕の方を見ているのに気がついた。
「あの?ミーシャさん?どうかされましたか?」
「余計なことは言わなくていいぞミーシャ」
店主が間髪入れず口を挟む。
「は、はい……」
なんか怪しいな?安さの理由は事故物件とかもしくは日当たり最悪、とかじゃないだろうな?
それならもう少し別の家にするが……
でもこの安さは魅力的だ。あとで締め上げれば白金貨30枚で買えるだろう。
「あの、書類の条件的には購入してもいいな、と思ったんですけど。やっぱり実際に家の方を見てみたいなと思うのですが、いいですかね?」
「へ?君がそういうなら。きちんと家を見るのも大事だからね」
ここから歩いて15分くらいさ。
そういいながら店主は邸宅に行く支度を始めてくれた。
そういえば、この応接室、埃1つついてないや……
見た目で判断しちゃ悪いけどこの店主が掃除できそうに見えないし?ミーシャさんかねぇ??
▼▼▼▼▼▼▼▼
店主について行って通りを歩く。
ぽかぽかとした陽気で、暑くはないけれど、それでも、歩き続けていると暑くなってくる。
なんか仰ぐものないかな。ないよな。
そう思った瞬間。
手に扇子らしきものが現れた。
は?!
なんだこれ……!!
王家の扇子:
王家の人が代々受け継いで持っている扇子。特に効果はない。
「そ、それは??もしかして、ローテンの王家の人だけが持っていると言われている扇子?!?!
ということは、あなた、王子様か何かですか?!」
は、ははぁ…と道の真ん中でひれ伏す店主。
いや、ここ結構人通りあるからね??
やめてよ!!
「なるほど、だからお金も多くお持ちで!!
あぁ、よく見ればその剣と盾も……
私がみたことのない特別なものですね!!!
なんと……」
もう、なんか僕は王族じゃないって言っても通じなさそうだわこれ。
なんで急にこんな扇子出てきたんだよ。
また今度、女神様にでも聞いてみるか。
「今日はお忍びなんだ。やめてくれ。周りの人にバレるじゃないか」
そう囁くと店主は、これはこれは申し訳ございません、とかなんとか言ってまた先導してくれた。
王家の者とは自称してないので嘘はついてない。
▼▼▼▼▼▼▼▼
邸宅の前に着いた。
早速外周を見て回る。
続いて家の中を見る。
どこを取っても問題ない。日当たりも開けた野原の中なので良く、ヒビとかそんなものもない。
なんなら家具がついているときた。
完璧じゃないか。なぜ安く買えるのだ。
残る可能性は事故物件ということだが。
さて、聞いてみようか。
「おい、店主」
口調を偉い感じにしてみる。相手の勘違いなら利用しない手はない。僕に非があるわけではないからね。
「はっ、なんでございましょうか?」
「この家はなんでこんなに安いんだ?普通ならもっとたかくてもおかしくないだろう?」
「それは……」
「言え」
威圧のスキルを使ってみる。すると、店主は固まってしまった。そして青ざめた表情になる。そんなに怖いのかこれ?
脂汗が顔面に浮き出ていて今にも倒れそうになっている。
あ、効きすぎだこれ。
スキルを緩めるやり方もよく知らないけど、力を抜いてみる。
あ、緩んだかな?
「え、えっと……
この家、実は……
事故物件というのかどうかは分かんないんですけども……
魔女の家なんです」
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