竜胆の独占欲

 男の酒で酩酊した挙句眠り込んでしまった女の髪に触れ、柔らかな感触を楽しむ。ただの世間知らずだと言ったらそれまでだが、お人好しを具現化したような隣人はこんな捻くれた人種相手にも温厚な態度は変わらなかった。察しも悪くないようで、自分の孤独を感じ取っているような節もある。それを嬉しく思う反面、生じる昏い感情がある。


 ――ねぇ、帰らないで。どこに行くの? アタシも連れて行って、ずっと傍にいさせてよ!


 彼女はいつだって優しいが、それは自分を一等愛してくれているわけではない。もしかしたらこの先、男ができて紹介してくるかもしれない事が不安で悲しくて、想像上のそれに狂ったように嫉妬して、彼女が帰宅した後は部屋を滅茶苦茶に荒して、泣いた。

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