帰郷

 非常に不本意であるが、数年ぶりに生家に帰った。

 相も変わらず仏頂面で辛気臭い父と同じく格式ばった調度品が揃った、広大であるのにどこか狭苦しい屋敷。唯一増えたものといえば、愛人くらいだろうか。実母と自分を産んだ妻に裏切られ、以来女嫌いの噂が濃厚だったが、所詮邪推にすぎなかったらしい。

 今時作りすぎたおかずのお裾分けという、時代遅れな事をしてきたぽけっ面の隣人。どうしても欲しくなって深夜に帰ってきたところを部屋に連れてこんで飼っていた女は今、父の膝の上にちょこんと収まっている。左足首には未だ、アンクレットのように自分が嵌めた足枷の輪が残っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る