第三章 いつか、伝説に...

第12話 延焼する火種

「どうするもんかなぁ」

創造主ゲームマスター的には罰した方が良いんだろうけど、そうも言ってられないんだよ」

「俺だってポーション乱用したし、罰せられる資格はある。俺を代わりに罰してくれて構わないぜ」

「いやいや。君も必要なんだ。これを見たまえ」


 そう示されたスクリーンには、黒い炎の塊のようなものが映っている。店主は老眼鏡をつけて、凝視した。


「こりゃ、なんだ?」

「名前はバグシード。正式名称ではないが、我々はそう呼んでいる。この種が色々なデータに潜り込んで、バグを引き起こしていたことがわかったのだ」

「じゃあ、それを潰せば良いんだな」

「そうなんだが、本題はここからでだな。この種がサラクエの運営サーバーに入って、歴代の主人公に根付いてしまった」

「てことは?」

「歴代主人公たちが、こちら側に流れ込んでくる」

「なんだって!!」



 店主は、まもなく訪れる難題に意気消沈していた。主人公ユーザーをぶちのめすことに抵抗はない。しかし、今までのように“データを消す”というマニュアルに沿ってやるわけではないのだ。つまり、相手は棒立ちの主人公ユーザーではない。



「とりあえず、神父さまに聖書セーブデータを返してあげてくれよ。あれがないと、辛そうだったんだ」

「わかった。返したところで、大変には変わりない。加えて、人員はユーザー様を合わせても、十人弱」


 暗くなる二人のムードを切り裂くように、の声がした。


「厳しくても、私たちはNPCとしてやり遂げなければならない。そうでしょう、お二人とも」

 彼、すなわち神父は柔らかな笑みを浮かべている。後ろには、ひょっこりと村人の姿もあった。


 普通のNPCであるならば、いくら勇気があっても店主のようになるものだ。

 しかし、神父は違った。


「この世界ゲームを救いながら、オートセーブによってなまけているユーザー様たちを一斉にサバけるなんて最高ではないですか☆!」

「え?」

 他の三人はポカンとしている。

「あっ、正確には歴代なので今のユーザー様ではないのか。まぁ、ユーザー様には変わりないですからね。店主さんも出して!“サラクエⅣ”のころ、売りつけられた気持ちをぶつけてたではないですか!!」


「ふふふ、ハハハ!!」

 突然、吹き出す店主。

「参ったぜ、神父さま。やってやろうぜ!!」

「ギルドメンバーにも連絡しておかないとっすね」

「それは、もうやってありますよ」




 -ギルドのチャット欄

 ≪創造主だぞ☆が入室しました≫

「ギルド限定クエストのお知らせ!

 〜歴代戦士への挑戦!〜」





 ───ついに始まる最終決戦!!

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