第9話 気づいたら、残り二週間
神父さまが消えてからのサラクエはとても忙しかった。一週間の長期メンテナンスが入っただけでなく、バグが散見されたイベントは中止となったのである。タロー自身はよく知らなかったのだが、このイベントはサラクエと同じ制作者が作った『失業勇者』シリーズとのコラボだったため、かなりユーザー間では荒れていた。
そして、タローもサラクエに戻れない日々が続いていた。仕事自体が忙しかったことと、メンテナンス中にスミレとやったゲームにハマってしまったのである。スミレのことを苦手なタイプだとタローは思っていたが、自分よりゲームに詳しく、少しずつ心を開いていた。
「マズイっすよ。タローさん達が来ない間に、
「神父さまも帰ってこないしな。ギルドのダークゲイザーはじめ、数人でクエストは進めているが、正直厳しいな」
村人と店主が武器屋のバックヤードで、しんみりとしている。
「ギルドメンバーも不定期参加を考えると、俺たちが無理矢理突っ込んで、どうにかするしかないっすかね」
「ああ、いっちょやるか」
店主が倉庫から武器を取り出しに行った後、村人の前に神父が現れた。その姿はボロボロであり、表情からも疲労の色が出ている。
「神父さまじゃないっすか。大丈夫...」
「問題ないですよ。しかしながら、早く準備してください。勇者が来ます!」
ざわめきに気づいた店主が、アイテムをポロポロと落としながら走ってきた。
「神父さまじゃないか!今まで何やって...」
「話は後です。とりあえず、皆さんを集めてください」
時刻は3時。ギルドメンバーは皆、ログアウトしていた。
「まぁ、この時間ならそうなるか。俺たちがやるしかないな」
「そうっすね、あんまり良い思い出ないっすけど。神父さまは大丈夫なんですか?」
「問題ないですよ。このメンバーは懐かしいですね。あの頃を思い出すとドキドキが止まりません」
満面の笑みを浮かべる神父に少しばかり鳥肌が立つ二人だったが、この感じさえも心地よかった。
店主は、店内で回避率が一番高いローブをまとい、ありたっけのアイテムをバックに。
村人は、イベント報酬武器を
神父は、清々しいスマイルを浮かべながら、愛用のハンマーを構える。
場所は、NPC専用の休憩室である旧魔王城。
隠れ勇者こと失業勇者が、ついに目の前に現れた。
次回、戦闘スタート!!
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