第6話 新たなユーザー

 神父さまとフレンドになってから、タローは毎日オンラインモードにログインしていた。といっても、イベントは不具合よって休止中であり、ぼーっと街を歩くだけ。

 神父さまもログインしていないようで、会うこともない。

 タローは段々、飽きてきていた。


 そんな中、タローは新たなゲームを買いに、行きつけのスモールカメラ新宿店に訪れていた。

 新作ゲームの棚には『織田無双7』や『都内ファイターⅥ』といった有名タイトルが並んでいたが、タローは足を止めることなくスルーする。先にはRPGコーナー......


 ではなく、恋愛ゲームコーナーだった。

 男性用から女性用まで多種多様なテーマのゲームが並んでいる。売れ筋は『肉食女に気をつけろ!!』と『新たなる彼女〜花火篇〜』らしい。

(よくわからないなぁ〜)


 タローはまるで図書館で本を探すように、一つ一つラベルを見ていった。

 残念ながら心に響くゲームはなかったが、女性用コーナーで思わぬ出会いを果たすことに......



「あの、鈴木先輩ですよね?私、一個下の高橋です!!」

 いきなり名字を呼ばれて動揺が隠せないタロー。声かけの最後に名乗っていたが、全く聞き取れてなかった。相手は下から覗き込んで、

「やっぱり鈴木先輩だ!私ですよ、高橋。高橋すみれ!」

 やっとのことで理解が追いついたタローは、居る場所(恋愛ゲームコーナー)と返答方法(動揺した受け答え)を振り返り、青ざめた。


「どうも、高橋さん。こんにちは。高橋さんもお休みでしたね。それでは......」

「先輩もゲームやるんですね!どんなの持ってるんですか?」

 予想以上に食いつく後輩に辟易するタローは、咄嗟に『サラクエ』だと


「ワタシもやってます!ちょっと先輩の家、行ってみても良いですか?」

「それはちょっと......」

「良いですよね!一人暮らしって聞いてますよ。もしかしてんですか?」

 と小指を立てられる。


 タローは完全に諦めの表情で、家に招待することとなった。


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